最新記事

フィリピン

マラウィ戦闘終結も戒厳令継続 イスラム過激派残党200人が国内潜伏か

2017年10月30日(月)14時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

ミンダナ島マラウィ市でのISとの戦闘終結が宣言された後、勝ち誇る国軍兵士 Romeo Ranoco-REUTERS

<国内残党200人は本当か、それともドゥテルテが引き続き軍を強化し戒厳令を続けるための誇張なのか>

フィリピン南部ミンダナオ島の都市マラウィを今年5月23日以来占拠して国軍との戦闘を継続していたイスラム過激派は、指導者2人と最後まで残って抵抗を続けていたメンバー約40人の相次ぐ殺害でようやく全市を解放、戦闘終結が宣言された。

しかし、同市周辺部に布告された戒厳令は依然として解除されておらず、残党など依然としてイスラム過激派メンバーの約200人がフィリピン国内各地に潜伏している、と政府は発表。こうした残党などを完全に掃討するためにドゥテルテ大統領は国軍参謀総長に陸軍を増強するよう指示を出すなど「テロとの戦い」はいまだに終結する見通しはない。

一部からは「こうした脅威の存在を強調することで国軍の増強、そして戒厳令の維持を意図的に行おうとしているのではないか」とのうがった見方もではじめている。

10月23日にロレンサーナ国防相が「戦闘の完全終結」を宣言したものの、26日には新任のゲレロ国軍参謀総長に対してドゥテルテ大統領が「陸軍10個大隊の新設」を指示した。

約200人が逃亡、潜伏中

さらに27日にはバディリア国軍報道官が「現在フィリピン国内でイスラム過激派のメンバー約200人の行方を追っている。彼らは逃亡中で国内各地に潜伏しているものとみられ、国民の生活を脅かす可能性がある」と発言した。

国軍によると、今年5月23日にマラウィ市での戦闘が勃発して以来、中東のイスラムテロ組織「イスラム国(IS)」に忠誠を誓うフィリピンのイスラム過激組織のメンバー、さらに密入国する形で戦闘に加わったISのメンバーあるいはシンパとされる外国人などその勢力は約700~千数百人とされた。

戦闘開始と同時に発動された戒厳令の下、国軍などの治安当局はイスラム過激派容疑者として約300人をリストアップ、重点的に行方の捜索に着手した。

その結果これまでにリストの約100人の逮捕に漕ぎつけたが、依然として約200人が捜査の網をかいくぐって逃走中だという。

マラウィでの5カ月に渡る戦闘でイスラム過激派側はメンバーやその妻など919人が殺害された、と国軍は公表している。この数字に逮捕された人数、逃走中の人数を加えると当初国軍などが明らかにした数字に近くなる。戦闘開始後に加勢のためにマレーシアやインドネシアから海路密入国したISと関連のある戦闘員を加味すればだいたい数字的にはつじつまがあうことになる。

すでに海外逃亡組もいる可能性

もっとも国軍が発表した「逃亡中の200人」は国内に潜伏しており「一般市民の生活に脅威を与える可能性がある」という説明は少し割り引いて考えたほうがいいだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

香港の高層複合住宅で大規模火災、13人死亡 逃げ遅

ビジネス

中国万科の社債急落、政府が債務再編検討を指示と報道

ワールド

ウクライナ和平近いとの判断は時期尚早=ロシア大統領

ビジネス

ドル建て業務展開のユーロ圏銀行、バッファー積み増し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 10
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中