最新記事

アメリカ社会

ヘロインなど「オピオイド系薬物中毒」 米国の地域社会に深刻な影

2017年9月26日(火)12時54分

インディアナ郡の救急サービスも、やはりオピオイド中毒のまん延で財務面で苦境に置かれている。同郡の救急サービスの主力となっている非営利団体Citizens' Ambulance Serviceでオペレーション担当ディレクターを務めるランディ・トーマス氏によれば、2016年以来、オピオイド中毒関連の呼び出しだけで、10万ドル以上の損失が出ているという。

オピオイド過剰摂取の患者が病院に搬送された場合にのみ報酬を得る仕組みだが、同氏によれば、過剰摂取の薬物に適切な治療を施した場合でも、彼らが病院に行くことを拒否すれば報酬は得られないという。

オピオイド系薬物の過剰摂取から命を守るナロキソン(別名「ナルカン」)の投与を受けて死の淵から生還した人々は、意識を回復すると怒り出し、攻撃的になり、病院への搬送を拒むことが多い、と同氏は言う。

オピオイド中毒関連コストが膨らむなかで、インディアナ郡のベイカー郡政委員は、今後どのような状況になるか確信が持てないという。州政府、あるいは連邦政府による介入がない限り、郡としてはサービスを削減するか増税するしかない、とベイカー氏は言う。

「これによって完全に基準が変わってしまった。予算管理における予測不可能性がこれまでとまったく違うレベルになった」とベイカー氏は話している。

オピオイド中毒禍のせいで郡財政が大きな問題に直面しているとはいえ、ベイカー氏にとって何よりも辛いのは、それによって奪われた人命だ。昨年秋、フェンタニルの過剰摂取で甥を失っている。

23歳だった甥の死について語っていたベイカー氏は、気持ちを整理しようと黙り込んだ。「何よりも辛く、困難な経験だ。世界の誰にも、このような思いを味わってほしくない」

(翻訳:エァクレーレン)

Paula Seligson and Tim Reid

[インディアナ(ペンシルバニア州)/チリコシ(オハイオ州) 19日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米国防総省、イランで数週間にわたる地上作戦を準備=

ワールド

日曜●アングル:トランプ氏製造業政策の「光と影」、

ワールド

再送フーシ派がイスラエル攻撃、イエメンの親イラン武

ワールド

再送-UAEのアブダビで5人負傷、火災も発生 ミサ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 2
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?...「単なるホラー作品とは違う」「あの大作も顔負け」
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 9
    ウィリアム皇太子が軍服姿で部隊訪問...「前線任務」…
  • 10
    「酷すぎる...」ショッピングモールのゴミ箱で「まさ…
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 9
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 10
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中