最新記事

北朝鮮

「核保有国」北朝鮮と世界は共存できるのか

2017年9月25日(月)11時15分
エイブラハム・デンマーク(元米国防副次官補)

9月6日に首都・平壌で行われた核実験成功を祝う大規模集会 KCNA-REUTERS

<北朝鮮が核搭載のICBMを完成させるのはもはや時間の問題。目の前の現実に対応した長期戦略が必要だ>

ICBM(大陸間弾道ミサイル)の完成に向けた発射実験、水爆との見方もある核爆発実験と、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は核兵器開発を急ピッチで進めている。米戦略軍のジョン・ハイテン司令官は、核弾頭を運搬可能なICBMを手にするのは「時間の問題」だと指摘した。

では、世界は核兵器を保有する北朝鮮と共存できるのか。少なくとも戦略核兵器のレベルでは、当面はイエスだ。

アメリカの核抑止力は今も強力だ。ロシアと中国は数十年前からアメリカへの核攻撃能力を備えているが、核抑止のメカニズムは正常に機能してきた。ここに北朝鮮の核兵器が加わったとしても、この構図が大きく変わるとは考えにくい。

ただし、朝鮮半島における通常兵器レベルの紛争の可能性については別問題だ。朝鮮戦争の休戦から64年間、アメリカの核の傘を含む米韓両国の軍事力が本格的な武力衝突を防いできたが、北朝鮮の核武装で状況は一気に危険なものになる。

北朝鮮側が自国の核抑止力に自信を持てば、大胆な軍事行動に出るかもしれない。北朝鮮は10年、韓国海軍の哨戒艦を沈没させ、黄海上の軍事境界線に近い延坪島(ヨンピョンド)に砲撃を加えたことがある。韓国側に合わせて50人の死者が出たが、今後は同種の挑発や、さらに重大な事件が続発する可能性がある。

核の拡散も重大な脅威になり得る。今より厳しい経済制裁が実施されて効果を上げれば、体制の生き残りに必死な北朝鮮は、他のならず者国家やテロ組織と平気で取引するはずだ。

こうした問題に対処できるのか。ある程度までは可能だ。同盟国の韓国、日本が朝鮮半島と周辺の軍備強化を図れば、将来の北朝鮮による挑発を抑止・防御する能力を高められる。アメリカは国際社会の協力体制を構築し、北朝鮮による核拡散の脅威を封じ込めることもできる。

中国の反対は気にするな

だが長期的には、それでは不十分だ。北朝鮮の軍事攻勢と核拡散の重大な危険性を考えれば、それを恒久的な「常態」として受け入れるわけにはいかない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ニデック、4―9月期純利益58%減 半期報告書のレ

ビジネス

年内に第三者委員会から最終報告が出る状況にはない=

ビジネス

26年春闘の要求、昨年より下向きベクトルで臨む選択

ビジネス

仏CPI、10月前年比+0.8%に減速 速報から下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 5
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 6
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 7
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 10
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中