最新記事

日本政治

自民、衆院選公約に教育機会均等 国立大授業料ゼロ構想も

2017年9月20日(水)18時15分

9月20日、自民党は衆院選の公約に「教育の機会均等」を盛り込む方針だ。写真は東京大学の安田講堂、昨年7月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

自民党は衆院選の公約に「教育の機会均等」を盛り込む方針だ。現在党内では、国公立大授業料分を一律無償化し私立大の学生にも追加的に負担軽減を図るため、「出世払い型拠出金制度」を有力案として検討中。学生の負担感が少ない上、卒業後の収入から少額ずつ源泉徴収するため政府の実質財政負担も年間数千億円程度に収まるという試算もある。同党教育再生本部は、財政膨張の回避と教育の機会均等を両立させる手法だとしている。

解散間近、公約の具体化急ぐ

自民党筋によると、10月22日投開票とみられている衆院選の選挙公約には「教育の機会均等」という文言を盛り込む方向。28日の臨時国会召集日に衆院が解散される見通しのため、内容を早急に詰めるとしている。

また、教育機会均等に回す財源の確保に関連し「8%から10%への消費増税分5兆円のうち、教育に回す分を増額することは安倍首相も承知している」(自民党筋)という。

安倍晋三首相は、11日の「人生100年時代構想会議」で、大学教育について「給付型奨学金や授業料の減免措置の拡充強化を検討する」と発言した。

財政的事情などから「一律無償化」という考え方は後退したが、大学で学ぶ意思のある学生の機会を失わせないようにするため、債務を負わせない形で授業料負担を軽くしようとの意図がうかがえる。

同党の教育再生実行本部の文科相経験者らが中心となって、授業料の減免幅拡大に向け、オーストラリアで導入済みの出世払い型拠出金のシステムを参考に検討を進めている。

この制度では、国公立大に通う学生の授業料は全額を政府で負担する。例えば、国立大の年間授業料53万円(平均)の負担額はゼロになる。

また、私大は同100万円前後(平均)だが、負担額は国立大授業料との差額47万円のうち、半額を国が負担。学生の実質負担額は23万5000円になる計算だ。

学生は卒業後、一定の年収(例えば300万円超)に達した場合、月収の一定割合ないし定額を月額給与から差し引かれ(源泉徴収)、返済していく仕組み。現在導入されている所得連動型奨学金では、毎月の返済額は最低2000円となっている。

金融機関が提供している住宅ローンのように複利で利子を取りようなことはなく、無利子を原則とし、あらかじめ返済期間を定めない。

すでに導入されているオーストラリアでの返済率を勘案し、約80%が完済されることを前提に制度設計していくという。

同本部の構想では、制度のスタート当初は一定の拠出を財政資金で用意。将来は返還を財源に充てる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、経済の一部セクター減産に不満 均衡

ワールド

プーチン氏、米特使と和平案巡り会談 欧州に「戦う準

ビジネス

次期FRB議長の人選、来年初めに発表=トランプ氏

ビジネス

ユーロ圏インフレは目標付近で推移、米関税で物価上昇
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドローン「グレイシャーク」とは
  • 4
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 5
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 6
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 7
    【香港高層ビル火災】脱出は至難の技、避難経路を階…
  • 8
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中