最新記事

ミャンマー

ロヒンギャ武装勢力、活発化で穏健派殺害も ミャンマー人道問題の闇

2017年9月14日(木)10時00分


テロ作戦

ここ数カ月、ラカイン州では地元行政官や政府への情報提供者、村長などの殺害が報告されており、武装勢力が、自分たちの活動に関する情報が治安部隊に漏えいすることを防ぐために残虐な戦術を採用しつつあるのではないかという憶測につながっている。

ラカイン州警察トップのセイン・ルイン氏は、「恐怖を植え付けることで政府への情報提供を遮断し、地域を支配した」と非難する。

ラカイン州北部での作戦に直接関与している軍関係者によれば、ARSAの計画に関する情報を入手することが、以前よりもはるかに難しくなっているという。これによって、一部の地域では「政府の機能が停止」しているという。「そのような場所にあえて留まろうとする政府職員はいないからだ」とこの軍関係者は語る。

州北部ブティダウン地区のある村長は、武装勢力から数回にわたって連絡を受け、村の若者を何人か訓練に参加させるよう要求されたが、断ったという。

「身を守るため、ときには警察署や地元行政官の家で寝させてもらわざるを得なかった」とこの村長は語った。

密告

武装勢力による情報遮断はおおむね成功しているが、軍関係者によれば、8月25日の襲撃がミャンマー治安部隊により大きな損害を与えずに済んだのは、ある情報提供者による密告だったという。

前日24日の夜、アタ・ウラー氏の部下たちがジャングル地帯に向かってから約1時間後、軍はロヒンギャの情報提供者から、襲撃が迫っているという合図を受けたという。

午後9時時点でのメッセージでは、複数の襲撃が迫っていると伝えられたが、どこが襲撃されるかは特定されていなかった。だがこの警告で十分だった。軍関係者によれば、治安部隊はいくつかの部隊をより大規模な拠点に退避させ、戦略的な地点を強化することで、政府側の多くの命を救ったという。

武装勢力による襲撃は午前1時前後から夜明けにかけて数波にわたって行われた。襲撃はもっぱら、昨年10月にもアタ・ウラー氏が3回の襲撃を行ったマウンドー地区で起きたが、今回は襲撃地点の北端から南端までの距離が100キロに及んでいた。またロヒンギャ武装勢力は、隣接するブティダウン地区北部も襲撃し、軍基地を攻撃しようという大胆な試みもあった。

「地理的にこれほど広い範囲で襲撃があるとは驚いた。地域全体が動揺した」と軍関係者は語った。

(翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国GDP、第2四半期は5.2%増で予想上回る 米

ビジネス

午前の日経平均は小反発、国内金利上昇で上値重い 金

ワールド

7─9月の石油需要「非常に強い」=OPEC事務局長

ビジネス

中国6月鉱工業生産、+6.8%で予想上回る 小売売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 6
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 7
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 10
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中