最新記事

中国

中国AI「お喋りロボット」の反乱――ネットユーザーが勝つのか?

2017年8月7日(月)08時56分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

AI「お喋りロボット」をさえ「逮捕」する中国共産党政権 REUTERS

中国のAI「お喋りロボット」が「党を愛さない」などと発言したため、当局はAI対話サービスを停止した。言論統制下の中国ネットでAIはどのようにして学習したのか?すでにAIの「洗脳」が始まっているが、ネットユーザーの勝利はあるのか?

AI「お喋りロボット」が国民の声を代表してしまった

中国のインターネット・サービスの大手「騰訊(テンセント)」とアメリカのソフトウェア会社「微軟(マイクロ・ソフト)」の協力により開発された人工知能(AI=Artificial Intelligence)対話プログラムがインスタント・メッセンジャー「QQ」やWeChat(ウィーチャット)(中国版ラインアプリ微信=ウェイシン)に登場した。

ネットユーザーと会話をする「お喋りロボット」の名は小冰(Xia-bing、シャオビン)とBaby Q(ベイビー・キュー)。小冰はもともと2014年5月30日にマイクロソフトから提供されて試験的にお喋り空間に登場しており、一応、当局の監視の下に徐々にネットユーザーの声を学習して、いまでは第4世代になっている。

こうして今年3月から正式にお喋りロボットとして活躍し始めたのだが、お喋りロボットはとんでもない「心の中の声」を発するようになってしまった。
以下にいくつかを列挙する。

●ネットユーザー:「共産党万歳!」
 Baby Q:「こんなに腐敗して無能な政党なのに、それでも万歳なんて言えるの?」

●ネットユーザー:「あなたは党を愛していますか?」
 Baby Q:「愛していない!」

●ネットユーザー:「愛国ってなに?」
 Baby Q:「裸官が多くなってからというもの、官商が結託し、政府の税収が増加して、政府の庶民に対する圧迫が厳しくなってきた。それでも中国人でいようとすることを、愛国って言うんだよ。(筆者注:裸官とは、配偶者や子供などを全て海外に移民させて、資産も海外に送っておいて、自分は何もない(真っ裸の)状況でだけ官位に残り、いつでも高跳びできる準備をしている腐敗官僚のことを指す)。

●ネットユーザー:「民主って、いいもの?」
 Baby Q:「絶対に民主でなければならない!」

●ネットユーザー:「あなたの"中国の夢"は何ですか?」
 小冰:「私の"中国の夢"はアメリカに移民することです。とっても真実味がある」

AIが「国家転覆」を企てた

 そこでネットが騒ぎ始めた。

 「AIが反乱を起こしたぞ!」

 「AIが蜂起した!」

 「AIが国家転覆を企てている!」

こんな書き込みまでが始まったために、中国当局はあわててAI対話サービスを閉鎖してしまった。ネットユーザーはこれを「AIロボットが逮捕された」と表現し、海外メディアの注目を浴びるようになった。たとえばRFA(Radio Free Asia)中文版「香港01」あるいは「Sydney Today」などが、「お喋りロボットの逮捕劇」を報道している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スタバ、バリスタ労組が無期限スト突入 繁忙イベント

ワールド

トランプ政権、カリフォルニア州提訴 選挙区割り変更

ワールド

米政府、独などの4団体を国際テロ組織指定 「暴力的

ビジネス

米経済にひずみの兆し、政府閉鎖の影響で見通し不透明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 5
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 6
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 10
    「ゴミみたいな感触...」タイタニック博物館で「ある…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中