最新記事

中国

建軍90周年記念活動から読み解く習近平の軍事戦略

2017年8月2日(水)16時15分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

中国人民解放軍建軍90周年、内モンゴル軍事訓練基地で行われた軍事パレード REUTERS

7月30日から8月1日にかけて中国人民解放軍建軍90周年記念活動が行われた。野戦軍事パレードと人民大会堂における習近平の講演から、中国の軍事的即戦力と軍民融合に関する戦略と野望を読み解く。

建軍後初めて行われた建軍記念日における軍事パレード

――習近平政権になってからの軍事パレードに関する「3つの初めて」

2015年9月3日、中国は建国後初めて、建国記念日・国慶節(10月1日)以外の記念日に軍事パレードを行なった。すなわち抗日戦争勝利記念日である9月3日に軍事パレードを行なったのは、建国後初めてのことである。

これは習近平政権になってから最初の「軍事パレードに関する初めて」だった。

しかし、この軍事パレードは「国慶節軍事パレード」同様、天安門広場で行なわれた。

このたび、中国人民解放軍の建軍記念日である8月1日(実際は2日前の7月30日)に軍事パレードを行なったのは、建軍後も、建国後も、やはり初めてのことで、これは習近平政権になってから2つ目の「軍事パレードに関する初めて」となった。

おまけに軍事パレードは天安門広場でなく、内モンゴルの軍事訓練基地という、「式典」とはほど遠い戦場現場を再現したような訓練場で行なわれた。場所と時間が発表されたのは、軍事パレード開催の、わずか14時間前のことだ。これもまた「戦場現場の即戦性」を象徴している印象を与えた。

実は7月30日(午前9時16分)にアップしたコラム「稲田防衛大臣辞任、中国でトップニュース扱い――建軍90周年記念を前に」を書いている最中に、具体的な場所と日時が発表され、筆者は慌ててその情報を加筆した。ついでながら、このコラムは30日の黎明に、新しいニュースを受けながら書いた。

具体的な場所は「朱日和」というアジア最大の軍事演習基地。内モンゴル自治区錫林郭勒盟スニタ右旗の南部にあり、「zhu-ri-he」と発音し、蒙古語で「心臓」という意味だ。1957年に毛沢東が戦車の秘密軍事訓練基地として選んだ場所である。

このように、天安門広場以外の場所で軍事パレードが開催されたということが、習近平政権の3つ目の「軍事パレードに関する初めて」だ。

なぜ軍事訓練基地を選んだのか

ではなぜ軍事パレードを行なう場所が北京の天安門広場でなく、朱日和軍事訓練基地だったのか。それは野戦区における「即戦力」と軍事大改革の成果を顕示するためである。

2016年1月2日のコラム「中国、軍の大規模改革――即戦力向上と効率化」に書いたように、 習近平は2015年12月31日、中央軍事委員会主席として、中国建国後初めての大規模な軍事改革を行なった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、レアアース採掘計画と中朝国境の物流施設

ビジネス

英BP、第3四半期の利益が予想を上回る 潤滑油部門

ビジネス

中国人民銀、公開市場で国債買い入れ再開 昨年12月

ワールド

米朝首脳会談、来年3月以降行われる可能性 韓国情報
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 4
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 5
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中