最新記事

中東

カタール断交、長期化なら通貨防衛で海外資産売却も

2017年7月14日(金)11時45分

7月12日、アラブ諸国とカタールの国交断絶問題が長引けば、ペルシャ湾岸諸国通貨と米ドルのペッグ制が脅かされ、これらの諸国が通貨防衛のためにドル資産を売却する可能性がある。カタール国営石油会社カタール・ペトロリアムで8日撮影(2017年 ロイター)

アラブ諸国とカタールの国交断絶問題が長引けば、ペルシャ湾岸諸国通貨と米ドルのペッグ制が脅かされ、これらの諸国が通貨防衛のためにドル資産を売却する可能性がある。

米連邦準備理事会(FRB)の利上げ路線と欧州中央銀行(ECB)の金融緩和縮小観測で世界的に借り入れ金利が上昇している時だけに、湾岸諸国の動きは世界の金融市場を揺さぶりかねない。

カタールは既に通貨リヤルの防衛を迫られており、投資家は今、サウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連合(UAE)、バーレーン、オマーンといった国々に影響が広がる可能性を恐れている。

クウェート、サウジ、カタール、UAEの国家資産は合計3兆ドル近くに上るため、通貨防衛のための資源はたっぷりある。

問題は、その大半が海外で保有されていることだ。

イタリアの銀行からシリコンバレーの新興企業、米国債、ロンドンの高層ビルに至るまで、湾岸マネーが流れ込んでいない主要資産は皆無に等しい。

ステート・ストリート・グローバル・インベストメンツの新興国債専門家、アブヒシェク・クマール氏は、「湾岸諸国は世界中で主要な不動産を所有している上、債券や株など流動的な資産の保有規模は把握できていない。従って売る必要が生じれば、その影響は大きいだろう」と語り、断交問題の長期化を案じた。

2009年のドバイ危機も、16年初頭に石油価格が1バレル=27ドルまで下がった時も、湾岸諸国はペッグ制への圧力を難なく交わしてきた。そして今のところ、ペッグ制が脅かされているのはカタールだけだ。

カタールの対外債務は500億ドルと、中央銀行の外貨準備より遥かに大きいため、危機が深まれば支援が必要になるかもしれない。

しかし湾岸諸国の政府にとって、カタールは1つのハードルに過ぎない。石油価格の見通しは暗く、米ドルと米金利は上昇している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元カレ「超スター歌手」に激似で「もしや父親は...」と話題に

  • 4

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中