最新記事

イスラム過激派

ISIS占領で廃墟の街フィリピン・マラウィ 武装勢力の戦闘最前線

2017年7月5日(水)15時30分

地図を確認するフィリピン兵。1日撮影(2017年 ロイター/Jorge Silva)

板でバリケードを張った2階建て住宅のバルコニーに大の字に寝そべり、板に空けた穴からライフルの銃身をのぞかせると、フィリピン軍の狙撃手は、撃つ前に静粛にするよう求めてきた。

「(今から)撃つ」と彼が冷静に言うと、50口径ライフルの銃声が響き、家中にこだました。彼は、同国南部ミンダナオ島のマラウィ市を5週間にわたり占拠しているイスラム武装勢力のアジトと見られる、1キロも離れていない住宅を狙ってるのだ。

隣には、射弾の観測や修正を担当する観測手が座り、別の穴から狙いを見定めていた。狙撃手は静かな声で言葉を交わしながら、アグス川を挟んだ対岸にあるマラウィの商業地区目がけてさらに3発の銃弾を撃ちこんだ。


武装勢力が占拠する対岸は、破壊された建物のがれきが散乱する戦闘地区になっている。そこには、たくさんの死体が腐敗しており、悪臭が火薬の臭いと入り混じっている。

過激派組織「イスラム国(IS)」に忠誠を誓う武装勢力による5月23日の電撃攻撃で占拠されたマラウィ市を奪還するため、数千のフィリピン軍兵士が戦っている。

フィリピン南部は過去数十年の間、武装勢力による反乱や、山賊行為に苦しんできた。だが、マラウィでの激しい戦闘、そして地元武装勢力と肩を並べて戦うインドネシアやマレーシア、イエメン、チェチェン出身のIS戦闘員の存在は、同組織がイラクやシリアで足場を失いつつあるなか、この地域が東南アジアにおける拠点となりつつあるとの懸念を生んでいる。

占拠を封じ込めるためにフィリピン軍が送り込まれたが、進展が緩やかで、困難かつ慣れない市街戦になるとは、誰も予期していなかった。

「われわれは、反乱には慣れている。だがこのような規模での展開やこの種の紛争は、われわれの部隊にとっては試練だ」。マラウィでの作戦指揮官の1人、クリストファー・タンプス中佐はそう語った。

マラウィ制圧作戦は、武装勢力が仕掛けた手りゅう弾が仕込まれたガスタンクなどの偽装爆弾に手こずっていると同中佐は言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミネソタ州に兵士1500人派遣も、国防総省が準備命

ワールド

EUとメルコスルがFTAに署名、25年間にわたる交

ワールド

トランプ氏、各国に10億ドル拠出要求 新国際機関構

ワールド

米政権、ベネズエラ内相と接触 マドゥロ氏拘束前から
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 5
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 6
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」…
  • 7
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 9
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 10
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中