最新記事

安全保障

稲田防衛大臣辞任、中国でトップニュース扱い----建軍90周年記念を前に

2017年7月31日(月)08時19分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

安倍首相が稲田防衛相をもっと早く辞任させなかった責任は大きい(7月24日の衆院予算委員会) Toru Hanai-REUTERS

稲田防衛大臣に関するニュースは中国のCCTVで何度も報道されてきたが、辞任報道はトップニュースに取り上げられた。一方で8月1日は中国人民解放軍の建軍90周年記念日。強軍への道が強調される中での対比が目立つ。

安倍政権の「マイナス」ニュースに強い関心

中国はかねてより、日本の安保関連や憲法改正関連などのニュースに強い関心を示し、日本の情報よりも深掘りした関連ニュースを流し続けてきた。特に今般の安倍政権の「森友問題」や「加計学園問題」特に「稲田防衛大臣問題」に関しては尋常ではない頻度で、ほぼ逐一報道している。その事実を日本に伝えるのは、日本の世論を「煽る」傾向に寄与するのではないかと懸念し、ずっと控えてきた。

しかし稲田防衛大臣の辞任報道に関して、お昼のニュースとは言え、28日の中央テレビ局CCTVのトップニュースで扱ったのと、まるで中国の「強軍の夢」と対比するような形で報道されたので、日本を相対的に考察するためにも、ご紹介した方がいいと判断した。

稲田防衛大臣辞任に関する時々刻々のニュース――28日のCCTVを追う

ニュース全体の流れをすべて観ることができるようなURLにリンクを張るのは困難だが、稲田氏に関する単独のニュースなら観ることができるので、いくつか列挙してみよう。

まず7月28日午前7時のCCTV「朝聞天下」(Morning News)は「稲田朋美防衛大臣は今日辞任を宣告する予定」という見出しで全国ネットの報道をした。

それを追う形で、同じく28日朝のCCTVの北京BS「お早う、北京」でも、非常に詳細に南スーダンの日報問題を、資料を見せながら報道した。

中国ではこの日報問題に対して「瞞報門」(日報欺瞞ゲート)という事件名が付いており、テレビの音から聞こえてくる「マン-バオ-メン」という発音は「瞞(man)報(bao)門(men)」のことである。「門」(ゲート)は「ウォーターゲート」以来、大きな事件に付ける名称である。

それくらい、稲田大臣の日報問題が中国では大きく扱われてきた証拠だ。

同じくCCTV、28日の「記者観察」では(観えない可能性がある)、駐東京のCCTV記者によるリポートが成され、その中で「自衛隊員が、稲田氏の視察の時のファッションに関しても早くから不満と失望を抱いていた」ことや、安倍内閣は「お友だち内閣」と呼ばれていることとか、辞任は「想定内」とみなされたいたことなど、日本国民の感情とともに、安倍内閣支持率低下の大きな原因になっていたことなども説明している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米上院財政委、水力・原子力・地熱発電の税額控除を延

ワールド

飢饉リスク、世界13カ所で深刻化 ガザなど介入必要

ワールド

空爆激化でイラン国民が首都から避難、生活必需品の買

ワールド

トランプ氏、イランとの核合意なお目指している=国防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 7
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 8
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 9
    コメ高騰の犯人はJAや買い占めではなく...日本に根…
  • 10
    「そっと触れただけなのに...」客席乗務員から「辱め…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中