最新記事

自動車

民事再生法申請のタカタ、不安残る事故防止策 交換ルールなど課題

2017年6月27日(火)15時34分

6月25日、タカタが民事再生法の適用申請による再建に動き出すが、最初のリコールから8年余りたった今も、肝心の事故再発防止策をめぐる業界内での合意づくりは進んでいない。都内で昨年2月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

異常破裂のおそれがあるエアバッグの大量リコール(回収・無償修理)で巨額の潜在債務を抱えるタカタ<7312.T>が26日、民事再生法の適用を申請し、再建に動き出した。しかし、最初のリコールから8年余り経った今も、肝心の事故再発防止策をめぐる業界内での合意づくりは進んでいない。タカタ製エアバッグ部品はなお多くの車に搭載されており、いつ起きるとも知れない事故に消費者の不安はぬぐえないままだ。

部品交換、届かない連絡

「対策部品の準備ができ次第、あらためて連絡します」。昨年10月、都内在住の男性に届いたある自動車メーカーからのリコール案内にはこう記されていた。その後、8カ月経つが、男性にメーカーからの連絡はない。

案内には「当社の車に異常展開の報告はなく、直ちに安全性の問題があるとは考えておりません」との文言もあった。だが、衝突事故が起きたら、命を守るはずのエアバッグに逆に殺されるかもしれないという不安が頭から離れない、と男性は漏らす。

タカタ製エアバッグの異常破裂は、火薬材料である硝酸アンモニウムが高温多湿の環境下に長期間さらされ、劣化したことが原因とされる。異常破裂によって、エアバッグを膨らませる部品のインフレーター金属容器が飛び散り、乗員の首に刺さるなどの死傷事故が相次いでいる。

リコールはホンダ<7267.T>が2008年11月に米国で初めて実施。09年には最初の死亡事故が発生し、その後、関連事故による死者は米国で11人、マレーシアなども含む海外全体で17人、負傷者は世界で180人超に上っている。事態を重く見た日米当局は、湿気を防ぐ乾燥剤を入れていないタカタ製エアバッグの搭載車両すべてのリコールを決めている。

「乾燥剤入り」の安全性と耐用年数

タカタは世界のエアバッグ市場のシェア約2割を占める。ホンダ、トヨタ自動車<7203.T>、独フォルクスワーゲン、独BMW、米ゼネラル・モーターズ、米フォード・モーターなど世界の車メーカー19社に問題とされるエアバッグは供給されていた。リコール対象はインフレ―ターの数で1億個超、リコール費用は1兆円以上に膨らむ見通しだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中