最新記事

鉄道

割増運賃、半分座席......東京の満員電車対策はロンドンに学べ

2017年6月7日(水)15時46分
さかい もとみ(フリージャーナリスト)※東洋経済オンラインより転載

電車遅延時は「自主的に振替輸送」も

これまでに述べたように、ロンドンの鉄道における運賃徴収は「ゾーン制」で、定期券でさえも「ゾーン1内7日間有効」とか、「ゾーン2-3内1カ月間有効」のように定められている。これはいろいろな面で利点が大きい。

ロンドン地下鉄は設備が古く、時として車両や信号などに障害が起こる。いきなり不通になってしまうことも日常茶飯事だ。だが、「ゾーン制」のおかげで、利用者自ら最適ルートを探して目的地に向かうことができる。しかも、振替ルートは地下鉄以外の鉄道でもいいし、定期券の所持者ならバス全線も追加料金なしで乗ることができる。日本とは違い、駅員から振替乗車票などをもらうという手間も生じない。

不通や大きな遅延が起きたとき、最適ルートの選択には、スマートフォンのアプリと地下鉄のほぼ全駅に付けられているWi-Fi網が役に立つ(残念ながら、携帯電話回線は地下駅構内につながっていない)。

英国にも、日本で親しまれている路線検索アプリ「ナビタイム」の現地版がある。起動画面が前述の「地下鉄路線図」とまったく同じ仕様で、かつ出発地と目的地をタッチすると運行情報が得られる仕組みだ。ロンドン交通局も同様の情報を出しているが、慣れない英語の地名を打ち込む手間が生じる。「ナビタイム」はバスルートの最適プランも弾き出せるので、都心で地下鉄が止まってしまったときのツールとしてなかなか役に立つ。

toyokeizai170607-2.jpg

駅名をタッチするだけで検索できる英国版「ナビタイム」。乗り換えルート確認はネット未接続でも可(筆者撮影)

また、遅延の被害に遭った乗客は鉄道運営会社にそのとき使った運賃の全額を取り立てできる制度がある。請求は本来の目的地への到着時間より15分以上余分にかかった際に認められる。運営会社は、取り立て請求をできるだけ避けたいという理由もあって、遅延防止に心掛けているわけだ。

運賃面でいくら特典をつくっても、一方で早いペースで利用客が伸びているのが現実だ。列車本数の増発や信号システムの改良でより多くの乗客をさばこうとしているが既存のインフラでは限界もある。

そんな中、電車の車内で座れる人数をもっと増やそう、という新たなアイデアが発表された。「パブのスツール」のような形状の"いす"「ホライゾン」だ。

着席できる乗客が3割増える

そのユニークなデザインはロンドンを拠点に、列車や旅客機のいすや内装を手がけるプリーストマングード社が考案。従来の座席と比べ、着席部分の長さが半分しかない。お尻で寄りかかれる程度のものだが、それでも1時間以上立ちっぱなしになるよりはずいぶんと楽だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀、5対4の僅差で0.25%利下げ決定 今後の

ワールド

IS、豪銃乱射事件「誇りの源」と投稿 犯行声明は出

ビジネス

ECB、成長率とインフレ率見通し一部上方修正=スタ

ビジネス

米11月CPI、前年比2.7%上昇 セールで伸び鈍
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 7
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 10
    欧米諸国とは全く様相が異なる、日本・韓国の男女別…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中