最新記事

イラク

ISIS戦闘員を虐殺する「死の天使」

2017年6月15日(木)14時00分
トム・オコナー

アズラエルとカタイブの民兵たちは動画のなかで、今はイラクの要衝モスル西部のシンジャール山近郊にいると言った。モスルといえばかつてのISISの最大拠点だが、今はイラク軍とクルド人部隊、米軍主導の有志連合が奪還する寸前だ。アズラエルたちは、ラマダン(断食月)の終わり(今年は6月25日頃)をシリアで迎えると誓い、ISISを追って今後自分たちがシリア国境を越える用意があることを示唆した。

【参考記事】モスル奪還作戦、死体安置所からあふれ返る死体

もっとも、歓迎されるとは限らない。国境をはさんでカタイブ・アル・イマーム・アリと目と鼻の先に陣取っているのは、米軍の空爆支援を受けるシリア民主軍(SDF)だ。クルド人を主体に、反体制派のアラブ人部隊やISISと闘う少数民族などから成るSDFは今、ISISが首都と称するシリア北部のラッカに猛攻撃を仕掛けている。その米軍とSDFが、シリアのアサド政府軍とこれを支援するイランを強く警戒している。PMFの部隊も、イランで訓練を受けているため信用されないのだ。

SDFのタラル・シロ報道官は先月、イラン政府が後ろ盾のPMFがシリア領土に入ることは許さない、と言った。「もし侵入しようとすれば、応戦する」と、クルド語放送のニュース局「クルディスタン24」に語った。

イラク奪還に中心的役割

だがここ数日、PMFがすでに国境を越えてシリア領内に入り、戦闘に備えて塹壕を掘り始めたという報道がある。PMFがシリアとの国境沿いで、ISIS掃討のためにシリア政府軍と同盟を組んだ可能性はある。だがPMFのアーメド・アル・アサディ報道官は、噂を否定した。クルディスタン24によれば、アサディは「イラク正規軍はイラク領土の外で活動しない」と言った。

PMFは過去3年間で、一時イラク国土の45%を支配したISISから領土を取り戻すのに中心的な役割を果たした。スンニ派の超保守派主体のISISは、支配下に置く住民の集団処刑や投獄を行い、残忍な圧政を敷いた。そこへ10万人以上のシーア派民兵が奮起して、重要都市でISIS一掃を掲げて戦った結果、ISISの影響力が及ぶのはモスルとわずかな地域を残すのみになった。アズラエルもそんなシーア派民兵の1人だ。5人の子を持つ父親でもあるアズラエルは、銃弾だけでなく斧や剣を使ってISIS戦闘員を惨殺し、戦いを通り越した残忍さで注目を浴びた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、コロンビア大統領と7日に電話会談 「意

ワールド

対ロ制裁法案にトランプ氏がゴーサイン、来週にも採決

ワールド

ブラジル、25年の牛肉生産で米国抜きトップに=市場

ワールド

米上院、グリーンランド巡りトランプ氏けん制 決議案
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 5
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 6
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 7
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが…
  • 8
    公開されたエプスタイン疑惑の写真に「元大統領」が…
  • 9
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 10
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 10
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中