最新記事

科学

性的欲望をかきたてるものは人によってこんなに違う

2017年5月2日(火)11時55分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

 ケネス・ガーゲンは、赤外線カメラを使って、真っ暗な小部屋にいる被験者たちの行動を観察した。しかし、インターネットの世界では秘密が守られるというのがほんとうなら、僕たちはどうやって、人々のネット上での行動を観察すればいいのだろうか? 良くも悪くも、僕たちのネット上での行動が、痕跡を残さないことはめったにない。デジタルフットプリントという痕跡を残すのだ。あなたがグーグルとかヤフー、ビングといった検索エンジンを使ったとする。すると、あなたが検索した文字列が記録され、いくつもの場所に保存されることになるのだ。検索エンジンの会社は、あなたの検索についてのデータを必ず保管している。なかには、個人情報の一部を伏せた検索履歴データを、公開している会社もある。検索エンジン以外にも、検索データの管理、記録、販売を行う第三者ソフトウエアというものがある。そうしたものを通じて、生(なま)の検索ワーズを検証すれば、僕たちはいよいよ「1人1人のフォークの先端にあるもの」を見ることができるのだ。

 次の語句リストを見てほしい。どの語句も、2010年5月に検索エンジン「ドッグパイルDogpile」に実際に打ち込まれたものだ。「ドッグパイル」というのは、グーグル、ヤフー、ビングをはじめ、いくつかの主要検索エンジンの検索結果をひとつにまとめて表示するメタ検索エンジンだ。このリストは、フィルターのかかっていない「性的欲望」を写したスナップショットのようなものと考えていい。

→ プロム用のドレスを着たシーメール shemales in prom dresses
(「プロム」は卒業記念ダンスパーティーのこと。「シーメール」は、豊胸手術をして、外見は女性のようだが、ペニスはついたままの男性のこと)

→ トワイライトのスラッシュ エドワードとジェイコブ Twilight slash Edward and Jacob
(「スラッシュ」は、既存の小説の登場人物をホモセクシュアルな関係に見立てる二次創作小説のこと。『トワイライト』はアメリカで大人気のティーン向け小説シリーズで、「エドワードとジェイコブ」はその登場人物)

→ 白い道を通る黒い肉塊 black meat on white street

→ 浮気をしている妻たちの動画 wives caught cheating on cam

→ アルファ・ヒーローが登場する最高のロマンス小説 best romance novels with alpha heroes
(ここで言う「アルファ」とは、トップに立つ有能なやり手の男のこと)

→ ケンドラ・ウィルキンソンのセックステープ kendra wilkinson sex tape

→ スパンキング小説 spanking stories
(「スパンキング」は、罰としてお尻をピシャリとたたくこと。「スパンキング小説」は、尻叩きプレイを扱った官能小説のこと)

→ 無料のゲイ動画 free gay video tube

→ シャツを脱いだジェイク・ギレンホール Jake Gyllenhaal without shirt

→ 女の子たちの乱交パーティー girls gone wild orgies

→ ジャージー・ショアのセックスマンガ jersey shore sex cartoons
(『ジャージー・ショア』はテレビの人気リアリティ番組)

 普通とは違う性嗜好を「性倒錯」と言う。性倒錯には生理的嫌悪感を呼ぶものもある。たいていの人は、このリストのいくつかの言葉に、生理的嫌悪感を覚えたのではないだろうか。こんな言葉を検索した人はそうとう危ないヤツにちがいない、と思った人も多いだろう。それはともかくとして、このリストを見ると、人の性嗜好が実に多種多様であることがわかる。まるで、レストランのメニューに、ビッグマック、ウミウシ、チョコレートアイス、バッタのフライ、豆腐......と並んでいるのを見ているような気分だ。人はほんとうに、こうしたものを食べているのだろうか?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など

ワールド

アングル:失言や違法捜査、米司法省でミス連鎖 トラ

ワールド

アングル:反攻強めるミャンマー国軍、徴兵制やドロー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 5
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中