最新記事

ロシア

デモにシリアに内憂外患、プーチン大統領再選に暗雲か

2017年5月8日(月)00時20分
河東哲夫(本誌コラムニスト)

ナワリヌイは「エリツィンの再来」なのか Maxim Shemetov-REUTERS

<ロシア大統領選を1年後に控えて大規模な反政府デモが発生。野党指導者ナワリヌイは「台風の目」になるか>

盤石と思われていたロシアで、プーチン大統領の足元が液状化してきた。

筆者が所用で首都モスクワに着いた3月下旬、数都市で不正蓄財など「メドベージェフ首相の特権乱用」に対するデモがあり、ロシア全土で1000人近くが拘束。4月3日にはロシア第2の都市サンクトペテルブルクの地下鉄で爆破テロが起きた。

親ロと言われてきたトランプ米大統領はシリアの化学兵器使用に対して、6日に空軍基地を爆撃。アサド大統領を守ってきたプーチンの面目をつぶした。

14年3月のクリミア併合、15年9月のシリア爆撃でオバマ前米政権の鼻を明かした「世界最強の指導者」プーチンは失速。アメリカが強腰に転ずれば、実はロシアに打てる手はないことを白日の下にさらけ出した。

ロシアはあと1年で大統領選挙がある。無風でプーチンが再選確実と思われていたシナリオはにわかに崩れた。きれいごとを国民に説教する裏で、特権を乱用する政権の二枚舌を世論は問題にしている。

【参考記事】大規模デモで始まったプーチン帝国の終わりの始まり

3月上旬、メドベージェフの特権乱用を糾弾するビデオがYouTubeに登場。その後、シベリア・トムスクでの抗議集会で12歳の少年が抑圧的な政治を批判したスピーチもYouTubeで100万人以上が見た。

集会参加者は口々に、当局は「回答」(ロシア語で「責任を取る」の意味も持つ)すべきだと言っているが、メドベージェフは答えない。代わりに地方の知事を不正で逮捕して、世論の目をそらすお決まりの小手先の工作を行ったが、逆に支持率は急落した。プーチン大統領に対しても、「回答」を迫る材料はいつでも出てくるだろう。

地下鉄テロも以前なら、これを契機に国内の締め付けを強めたものだが、今回はこれもしない。米軍のシリア爆撃についても御用系マスコミは一斉に非難を始めたが、ロシア政府はアメリカに対抗するより話し合う姿勢を崩さない。4月末に予定していた毎年恒例の「国民との直通問答」(全国からの質問に、プーチン1人が数時間にわたりテレビで答える)は数カ月延期。内外とも想定外のことが増え、政権は機能停止したかのようだ。

ソ連を知らない世代が20代後半になった今、社会と政治の潮目は変わる。ソ連のぬくぬくとした生活を知らない若者は、当時を知る老年世代のように「自由よりパンを」とはならない。石油収入を老年保守世代にばらまいて手なずけ、批判は締め付けて権力を維持する現在の政権には反感しか持たない。その上、お偉方が公私混同では、もうやっていられまい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米特使、イスラエルでネタニヤフ首相と会談へ=イスラ

ワールド

シンガポール、宇宙機関を設立へ 世界的な投資急増に

ビジネス

英製造業PMI、1月は51.8に上昇 24年8月以

ワールド

イスラエル、ガザ南部ラファ検問所再開  初日は50
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 2
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」から生まれる
  • 3
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタリア建築家が生んだ次世代モビリティ「ソラリス」
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 6
    中国がちらつかせる「琉球カード」の真意
  • 7
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 8
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 9
    エプスタイン文書追加公開...ラトニック商務長官、ケ…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中