最新記事

イラク

モスル空爆で多数の民間人が殺された責任は誰にある?

2017年4月6日(木)10時30分
ジャック・ムーア

一方、マーク・ミリー米陸軍参謀総長は3月末に、「こちらの進撃を遅らせるために、ISISが建物を自分たちで爆破し、その責めを有志連合に負わせた可能性が十分にある」との見解を表明している。

イラク軍も、ISISが建物に爆発物を仕掛けたため多くの死傷者が出たという有志連合の説明を支持している。

異なる報告もある。例えばロイター通信は複数の証言を基に、空爆で直撃を受けた建物が倒壊し、数十人の民間人が瓦礫の下敷きになったもようだと報じている。

OHCHRのルパート・コルビル報道官は、ISISが民間人の生命を尊重せず「人間の盾」として利用していると述べ、「そうした罠に引っ掛からないよう」、有志連合に警戒を促した。

【参考記事】対テロ軍事作戦に積極的なトランプが抱える血のリスク

だが実戦経験の豊富な軍隊(パレスチナ急進派の組織ハマスが実効支配するガザ地区を攻撃するイスラエル軍、シリアを空爆するロシア軍など)の例を見ても明らかなように、人口の密集した都市部を狙う軍事作戦を実行する限り、民間人の犠牲を防ぐことはできない。

ISIS「壊滅」を公約に掲げるトランプ米大統領は、戦闘員の家族を攻撃対象にする可能性を示唆したこともあり、空爆対象に関する制限の緩和に向けて動いている。とにかくISISを葬り去りたい一心のトランプが、国連や人権団体からの助言に耳を貸す可能性は低い。

[2017年4月11日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格、6月前年比+2.6%に加速 関税措置

ワールド

米、新たな相互関税率は8月1日発効=ホワイトハウス

ワールド

米特使、イスラエル首相と会談 8月1日にガザで支援

ビジネス

エヌビディア「自社半導体にバックドアなし」、脆弱性
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 9
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中