最新記事

テロ組織

ISISの終わりが見えた

2017年4月19日(水)17時20分
トム・オコーナー

モスルの南で、逆さまにしたISISの旗を掲げるイラク連邦警察 Zohra Bensemra-Reuters

<3年前にイラクの40%を支配していたISISが、今はわずか7%未満。撤退先のシリアに残る2拠点も、落ちるのは時間の問題だ>

テロ組織ISIS(自称イスラム国)の「最後の日」が、かつてなく近づいたかもしれない。カリフ制国家の樹立を宣言してから3年近くが経ち、ISISはいまや、イラクから完全に排除される瀬戸際だ。まだ支配権を保っているシリアの2つの主要拠点でも、アメリカとロシアの支援を受けた軍隊を相手に、厳しい決戦を迎えようとしている。

【参考記事】ISISが中国にテロ予告

戦乱のイラクでISISが拠点としてきた都市モスルでは、ISISの敗北が間近に迫っている。ISIS打倒のために手を結んだイラク軍、クルド人部隊、イランの支援するイスラム教シーア派民兵組織、そしてアメリカ主導の有志連合は、モスル西部のはずれまでISISを追いつめている。そこに残っているISIS戦闘員は、おそらくは隣国シリアへの退却を余儀なくされるだろう。

【参考記事】モスル奪還作戦、死体安置所からあふれ返る死体

アルカイダのイラク支部組織として生まれたISISは、2014年にはイラクの40%を支配していた。だが、2014年に主要都市を手中に収めたあと、イラク全土で敗北が続いた。2017年3月末には、ISISの支配地域はイラクの7%未満にまで縮小したと、統合作戦軍の司令部報道官を務めるヤーヤ・ラスール准将は述べている。

奪還寸前、バグダディのモスル

つまり、イラクにおけるISISの支配地域は、モスルの一部に絞られているということだ。モスルは、ISISの支配下では群を抜いて人口の多い都市だ。2014年には、指導者のアブ・バクル・アル・バグダディが、モスルからすべてのイスラム教徒に向けて、世界規模の聖戦ネットワークに参加するよう呼びかけた。

知られている限りでは、バグダディが公に姿を見せたのは、それが唯一の例だ。だが、イラク軍とその同盟軍は、ここ数カ月の戦闘により、モスル東部からISIS戦闘員を駆逐した。さらに今週には、バグダディがカリフ制国家の樹立を宣言したヌーリ・モスクの奪還も目前に迫った。このモスクの奪還はISISにとって、象徴的にも戦略的にもさらなる大きな打撃となるはずだ。

【参考記事】ISISは壊滅する

ISISは、イラクからの撤退計画を立てている。アメリカ当局の推定によれば、モスルにはおよそ2000人のISIS戦闘員が残っているものの、バグダディを含めた多数の構成員が隣国シリアへ逃亡したとの報告が多数寄せられている。シリアでは、まだ残っている9000~1万2000人のISIS戦闘員が集結していると見られる。

国境を越えたシリアでは、ISISの展望はイラクよりは明るい。ISISは現在でも、シリア中部と東部の広い地域を支配している。政府軍側の防御拠点がある都市デリゾールも、ISISが包囲している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪ボンダイビーチ乱射事件、銃撃前に手製爆弾投てきも

ビジネス

午後3時のドルは157円前半へ小幅安、日銀後の急伸

ビジネス

日経平均は続伸、節目5万円を回復 AI関連に買い戻

ビジネス

ドイツ自動車輸出、1─9月に約14%減 トランプ関
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 8
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 9
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中