最新記事

ベンチャー

ウーバーはなぜシリコンバレー最悪の倒産になりかねないか

2017年3月13日(月)21時40分
ケビン・メイニー

2010年代版のドレクセル?

ウーバーが潰れた後の惨状は、想像するのも難しい。ベンチャーキャピタルやケイパーのような個人投資家からマイクロソフトやシティグループなどの大企業に至るまで、多くの関係先が同社に出資している。従業員は1万1000人(運転手を除く)で、大半がシリコンバレー周辺に集中し、新オフィス建設のために2億5000万ドルを注ぎ込むところだ。それらがすべてパアになれば、昨年の大統領選で民主党が味わったのと同じくらい強烈な自尊心への鉄拳が、今度はシリコンバレーを襲うかもしれない。

ウーバーは短期間で見事な仕事を成し遂げた。オンデマンドの配車サービスという新しい市場を創造し、定義を作り、今も独占している。人々の暮らしを変え、都市交通の未来に対する考え方を一新した、歴史に残る重要な企業だ。その功績を、カラニックや彼の仲間から奪える者などいない。

配車サービスは不滅

だがウーバーは企業としての欠陥も露呈した。これに匹敵する前例といえば、カラニックがまだ小学生だった1980年代の(なんと彼はまだ40歳だ)米証券ドレクセル・バーナム・ランバートの事件だ。

伝説の投資家マイケル・ミルケン率いるドレクセルは、債券市場でジャンクボンド(高利回り債券)を開拓して市場を支配。ウォール街と企業の関係を永遠に変えた同社は、スーパースターになった。だが異常なまでに成果を求める企業体質が災いし、従業員は最終的に刑事訴追されるほどのリスクを取った。結局同社は、ウォール街の頂点を極めてから数年で倒産に追い込まれた。ミルケンは証券詐欺の罪で刑務所に入った。

ドレクセルが作り上げたカテゴリーは健在だ。同社が姿を消した現在も、ジャンクボンドは1兆ドル規模で取引されている。

ケイパー夫妻はウーバーを存続させるため、企業文化を創り直すようカラニックに圧力をかけている。もし同社が約束を実行し、アップルやアマゾンのような企業に肩を並べられるなら素晴らしいことだ。だが不祥事を積み重ねるたびに、ウーバーは2010年代版のドレクセルに似てくるようだ。

*お詫びと訂正:本文中に当初「敵敵出行」とあったのは「滴滴出行」の誤りでした。訂正してお詫び申し上げます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、償還延期拒否で18日に再び債権者会合 猶

ワールド

タイ、2月8日に総選挙 選管が発表

ワールド

フィリピン、中国に抗議へ 南シナ海で漁師負傷

ビジネス

ユーロ圏鉱工業生産、10月は前月比・前年比とも伸び
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中