最新記事

アメリカ政治

トランプとロシア連携?──FBI長官が「捜査中」と認めた公聴会の闇

2017年3月22日(水)21時30分
ミーケ・エーヤン

下院公聴会で証言するコミーFBI長官(左)とロジャースNSA長官(3月17日) Joshua Roberts-REUTERS

<昨年の大統領選で、トランプ陣営とロシアは協力関係にあったのか──世界を揺るがす疑惑についてFBI長官が「捜査中」と証言。トランプはじめ関係者は必死のディフェンス、あるいは焦点外しを試みた>

月曜に開かれた米下院情報特別委員会の公聴会は、いまだ明らかにされていない巨大な真実をめぐる知略の攻防第一回戦だった。誰もが保身に必死で、言動は矛盾だらけだ。いずれは真実の力が勝つと信じたい。

FBI(米連邦捜査局)のジェームズ・コミー長官とNSA(国家安全保障局)のマイク・ロジャース長官は、ロシアが昨年の米大統領選に介入した問題ばかりでなく、それとトランプ陣営との関係について捜査が進んでいることを証言した。ドナルド・トランプ大統領の地位にも可能性がある重要事実だ。

コミーはトランプ陣営がロシア政府と共謀関係にあったかどうかを捜査中だと認め、捜査開始は昨年7月だったと明かした。米捜査当局は12月の時点で、ロシア政府には「アメリカの民主主義を傷つけ、クリントンを傷つけ、トランプを助ける」意図があったと強く確信していたとも証言した。捜査の詳細や捜査対象の人物に関しては「話せない」と繰り返したが、もしアメリカ国民がロシア政府と共謀して選挙に介入したのが事実なら「非常に深刻」だと述べた。それこそまさに捜査が必要な理由であり、メディアで渦巻くあらゆる疑惑の真相を明らかにすべきだ。

【参考記事】オバマが報復表明、米大統領選でトランプを有利にした露サイバー攻撃

コミーもロジャースも、オバマ前政権がトランプタワーを盗聴したと繰り返すドナルド・トランプ大統領の主張について、根拠がないと一蹴した。コミーはFBIと司法省の立場を代弁して、そのような疑惑を裏付ける証拠は存在しないと証言。ロジャースはさらに踏み込み、「英情報機関GCHQ(英国政府通信本部)が盗聴に関与した」とするトランプの主張をきっぱりと否定。オバマからそんな要請を受けた形跡はなく、あり得ない話だと切り捨てた。

【参考記事】「オバマが盗聴」というトランプのオルタナ・ファクトに振り回されるアメリカ政治

コミーが進行中の捜査の詳細について頑なに口を閉ざしたのは、トランプ政権にとっては不気味だ。何かトランプ政権にとってよくない証拠を掴んでいるのかもしれない。

【参考記事】「トランプはロシアに弱みを握られている」は誤報なのか

注目される矛盾点は以下の通り。

■ドナルド・トランプ大統領

ドナルドは公聴会のさなか、事実を歪曲し、コミーの証言でロシアが大統領選に干渉していなかったことが証明された、という趣旨のツイートをした。だがコミーは、ロシアが投票集計機を操作したことを示す証拠はない、と言ったにすぎない。

トランプのツイートについて聞かれたコミーは、ロシアが干渉していなかったと証言したのではないと明言した。その一方で、ロシアが米国世論の操作を狙い、民主党全国委員会(DNC)のメールをハッキングし、その内容を「ウィキリークス」に暴露した、とも証言している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

5月鉱工業生産速報は前月比+0.5%=経産省(ロイ

ワールド

仏財務相、EU・米貿易交渉の延長期待 「悪い協定よ

ワールド

トランプ氏、「大統領はとても危険な職業」と吐露

ワールド

イスラエル首相、ハマス拘束人質50人の解放が最優先
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 3
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 4
    メーガン妃への「悪意ある中傷」を今すぐにやめなく…
  • 5
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 6
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 7
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 8
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 9
    自撮り動画を見て、体の一部に「不自然な変形」を発…
  • 10
    突出した知的能力や創造性を持つ「ギフテッド」を埋…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 10
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中