最新記事

イギリス社会

職場でハイヒール強要は違法にすべき? 英国下院で審議へ

2017年2月28日(火)15時30分
松丸さとみ

夏季のネクタイやスーツは男性差別?

この一件は、ソーシャル・メディアでも話題になり、ツイッターでは#dresscode(服装規定)や#noheels(ヒール要らない)、#loveheels(ヒール大好き)と言ったハッシュタグを使って意見が交換された。テレグラフ(2017年1月25日付)が掲載したこうしたツイートの中には、「夏にもスーツとネクタイを着用しなきゃいけない服装規定は、男性への性差別?」というものもあった。女性のヒールが不快であるのと同様、男性のスーツとネクタイも不快ではないかと思う人も確かに多いだろう。

ただし、2016年9月15日付のテレグラフにソープさん自身が寄せた記事では、この件はソープさんにとって「単なるヒールの問題じゃない。女性の権利の問題だ」と言い、女性がヒールと化粧を求められることは、男性がシャツやネクタイの着用を求められるのとは違うと主張している。ハイヒールが健康を損なう可能性があることに加え、男性のシャツやネクタイとは異なり、ハイヒールは女性を性的な存在とするためのものだからというのがその理由だ。

「メイ首相はハイヒールを脱ぐべき」?

フィナンシャル・タイムズによると、英国には2010年平等法という法律があり、ハイヒールを強要するのは本来違法となる。しかし下院議会の「請願委員会」と「女性と平等委員会」が今回作成した報告書によると、一部の業界では差別的な服装規定がまだまかり通っており、平等法が効力を発揮していないことが伺えたという。そのため、平等法を迅速に見直し、必要なら修正する必要があるという。

ちなみに、ハイヒール以外にも英国の企業にはさまざまな服装規定が存在する。エキスプレスによると前述の報告書では、髪を金髪に染めること、露出度の高い服装をすること、化粧直しを常に行うこと、などを指示する事例が報告されているという。

一方で、2016年7月に首相に就任したメイ首相はハイヒール好きとして知られているが、英国の労働組合GMBが2016年9月、ソープさんの一件を受けて、メイ首相に「職場での女性活躍を推進したいなら、メイ首相はハイヒールを履くのをやめるべきだ」と逆に注文をつけた。しかしこれに対してソープさんは前述のテレグラフの記事の中で、メイ首相にはハイヒールを履く権利があるはずだと一蹴。英国で働くすべての女性が、自分が履きやすいと思う靴を選べるべきだ、と主張している。

女性にとっては日常的なアイテムのハイヒールが、英国における女性の権利に新たな視点をもたらしたこの請願書の行方に、英国で多くの人が注目している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

G20首脳会議が開幕、米国抜きで首脳宣言採択 トラ

ワールド

アングル:富の世襲続くイタリア、低い相続税が「特権

ワールド

アングル:石炭依存の東南アジア、長期電力購入契約が

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中