最新記事

日米関係

保護主義的トランプ発言に日本の打つ手は? 政府内で対応策求める声も

2017年1月13日(金)11時14分

1月12日、トランプ米次期大統領が「国境税」(ボーダータックス)の導入意思をあらためて示し、第2次世界大戦以降の自由貿易体制に陰りが出てきた。写真は安倍首相がトランプ氏との初会談後に行った記者会見の場に飾られた両国の国旗。2016年11月撮影(2017年 ロイター/Andrew Kelly)

 トランプ米次期大統領が「国境税」(ボーダータックス)の導入意思をあらためて示し、第2次世界大戦以降の自由貿易体制に陰りが出てきた。対米貿易黒字の日本へ圧力がかかり続ければ、グローバルに展開する日本企業の打撃になるだけでなく、保護主義への懸念から円高になるリスクもある。

 政府内では事態が深刻化した場合に備え、企業支援を柱とする政策対応を求める声も浮上している。

政府が密かに作成した資料、対米投資の巨額さ強調

 黙っていたら通商摩擦に発展しかねない――。中国や日本を名指しし、貿易の不均衡是正を主張するトランプ氏の発言を受けて、日本政府関係者のひとりは危機感を示す。

 「経済成長と貿易赤字の拡大は、コインの裏表。にもかかわらず『不当な貿易』と国名を挙げて名指しするとは」と、別の政府関係者も、トランプ氏の会見での発言に驚きを隠さない。

 昨年11月のトランプ次期米大統領と安倍晋三首相の会談を踏まえ、安倍首相がトランプ氏との友好関係の構築を強調したが、11日の会見を受けて政府内の警戒感は強い。

 在米日本大使館は、米商務省などのデータをもとに日本の対米直接投資が311億ドルと、ドイツの255億ドル、カナダの250億ドルを抑え「20カ国・地域(G20)の主要国の中で最大」と明記した資料を作成した。

 資料では、14年までの累計で「日本の多国籍企業」が83万9000人分の雇用を米国内で生み出したことも例示し、「日米関係がウィン・ウィンであることを働きかける」(先の関係者)とみられる。

国境税現実なら、日本企業にも打撃

 しかし、過去の実績だけで収拾をはかれるかは不透明だ。実際、政府内には「オバマ政権下での実績を示してもトランプ氏の心には響かない」「これまでとは異なるアプローチも必要」との声がある。

 マクロ動向に詳しいある政府関係者は「安いところでモノを作って、高く売れるところで販売するというモデルが崩れることを覚悟する必要が出てきた」と危機感を募らす。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル人人質の遺体返還、時間かかる可能性=ハマ

ビジネス

米財政赤字、25年度は2%減の1.775兆ドル 純

ワールド

ガザ持続的和平で地域は恩恵、「平和の配当」に=IM

ビジネス

米銀行株が急落、自動車関連2社の経営破綻で不安高ま
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口減少を補うか
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    間取り図に「謎の空間」...封印されたスペースの正体は?
  • 4
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 5
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 6
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 7
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 8
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 9
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 10
    ホワイトカラーの62%が「ブルーカラーに転職」を検討…
  • 1
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 4
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中