最新記事

交通

水素で走る列車は欧州鉄道の未来形?

2017年1月10日(火)10時40分
アンソニー・カスバートソン

COURTESY ALSTOM

<ドイツのローカル線に今年登場する燃料電池が動力源の新型列車は、ディーゼル機関車のクリーンな代替となるか>(写真:仏アルストムが製造する水素燃料電池列車)

 かつて蒸気機関車が走っていた線路をディーゼル機関車が走るようになり、ついには電化される――それが鉄道の進化の流れだとすれば、欧州に今も多く残るディーゼル区間も、将来的には電化されることになる。

 だがドイツで近くお目見えするのは、水素を使った燃料電池を動力とする新型列車だ。17年12月、ドイツ国内の一部ローカル線では、高速鉄道車両メーカーの仏アルストムが製造する「コラディア・アイリント」が運行を始める計画だ。同社のアンリ・プパルラファルジュCEOは「クリーンな交通機関という分野に革新的な新技術を投入できることを誇りに思う」と述べた。

 アルストムによれば、コラディア・アイリントはこれまでローカル線を走っていたディーゼル車と同等の走行能力を持つ。しかも排ガスや二酸化炭素を排出せず、さらに燃料となる水素は化学工場から副産物として排出されたものを利用する。

 ディーゼルエンジンを使わないため、騒音がかなり軽減されるメリットもある。これは乗客にとっても、沿線住民にとってもありがたいことだ。

【参考記事】最適な生育環境を「コピペ」して栽培できる農業技術「フード・コンピュータ」

 水素燃料電池列車は、ドイツ北西部ニーダーザクセン州の約100キロの区間を走る予定だ。計画が順調に進めば、さまざまな可能性が生まれそうだ。今でもなお、欧州の鉄道網のかなりの部分は電化されておらず、アルストムによればドイツだけで4000両ものディーゼル車が走っている。

 水素燃料電池列車の運行は、完全電化が現実的でない区間に電化とほぼ同等の恩恵をもたらす貴重な機会となるかもしれない。コラディア・アイリント導入のハードルを下げるため、アルストムでは車両製造から保守、水素の供給インフラ整備までをまとめて請け負う計画だ。

 ニーダーザクセン州での運用がうまくいった暁には、ドイツの他の州でもコラディア・アイリントの導入が相次ぎそうだ。デンマークやオランダ、ノルウェーといった国々も関心を示している。

 燃料電池列車の運行を始める場所としてドイツは理想的な条件がそろっている。化学工業が盛んなおかげで、既に長大な水素パイプラインのインフラが存在する。2023年までに、燃料電池自動車向けに400カ所を超える水素ステーションを整備する計画もある。

 水素で走る列車が欧州で当たり前の風景になる日も、そう遠くはないのかもしれない。

[2017年1月10日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-米政府、海上停滞中のイラン産原油売却を容認 

ワールド

米国防総省、パランティアのAIを指揮統制システムに

ビジネス

米ユナイテッド航空 、秋まで運航便5%削減 中東情

ワールド

米、イラン戦争の目標達成に近づく=トランプ氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 3
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 4
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 5
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    「嘘でしょ!」空港で「まさかの持ち物」を武器と勘…
  • 8
    将来のアルツハイマー病を予言する「4種の先行疾患」…
  • 9
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 7
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 8
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中