最新記事

環境

トランプ、想像を絶する環境敵視政策が始まった──排ガス規制の米EPAに予算削減要求とかん口令

2017年1月25日(水)21時22分
ジェシカ・ワプナー

 エベルは、新規・既存の石炭や天然ガスの火力発電所を対象に温室効果ガスの排出規制を定めた「大気清浄法(CAA)」や、保護対象水域への汚染物質の排出を許可制にした「水質浄化法(CWA)」、チェサピーク湾に排出される汚染物質の総量を規制する「日間最大排出量(TMDL)」などの規制に軒並み反対しているという。
,
 メモでは、EPAが科学的な研究に出す補助金の廃止も求めていた。「長年アメリカの雇用を破壊してきた偏見に満ちた反エネルギー対策」を排除するために、EPA内の意思決定プロセスを改革し、連邦政府及び州政府の規制や決定をくつがえせないようにさせる提言もあったと、アクシオスは伝えた。

 環境は大丈夫なのか。米コロンビア大学サビン気候変動法センターのマイケル・バーガー事務局長は、環境規制の多くは容易に変更できないとみる。例えば、温室効果ガスの排出が気候変動を引き起こすと結論付けたEPAの2009年の報告書「危険状況調査の結果(Endangerment Finding)」。発表以来、米政府による環境政策の指針となってきた見解をトランプ政権が取り消したり無視したりするのは、裁判所が認めない限り不可能だという。少なくとも数年間は。

異常気象に備えることもできない

 だがオバマ前大統領の大統領令を、トランプの大統領令で撤回修正することは可能だ。米オンラインメディア、ヴォックスが伝えたところによれば、国有地での石油掘削を禁じる措置も撤回の対象に挙がっている。オバマ政権下の環境政策の一部は、法律ではなく大統領令によるもので、オバマの思い入れは強いが撤回も簡単なのだ。環境諮問委員会が、新しい建築工事などを評価する際に、気候変動への影響を防ぐために作られた指針が良い例だ。「あれが撤回されれば悲惨だ」とバーガーは言う。例えば、気候科学者が予測した海面の上昇や非常に強い暴風雨などの災害に対して、耐久性がない建物が建設されてしまう恐れがある。

 米環境保護NGOエンバイロンメンタル・ワーキング・グループ(EWG)のケン・クック代表は、「環境や公衆衛生、科学に対する殺戮行為」と、反対すると声を上げた。エベルの内部メモから、人命も救ってきた重要な環境保護対策を、新政権がぶち壊そうとしている意図が読みとれると、クックは言った。

 はっきりしているのは、環境敵視政策に特定の被害者はいないということだ。地球全体が、トランプ新政権の過ちの責めを負うことになる。

ニュース速報

ビジネス

6月製造業PMIは低下、サービス業は若干改善

ワールド

米上院、選挙改革法案の審議進行で採決 共和党反対で

ビジネス

アルゼンチン、債務交渉継続で合意 デフォルト回避

ビジネス

モルガンS、接種未了の社員・顧客のNYオフィス入館

MAGAZINE

特集:ファクトチェック 韓国ナゾ判決

2021年6月29日号(6/22発売)

慰安婦と徴用工の裁判で正反対の判決が── 「大人」になった韓国世論と政治が司法を変えたのか?

人気ランキング

  • 1

    あなたがダイエットに失敗するのは内臓脂肪を燃やす栄養素を制限しているから

  • 2

    女子学生を美醜でランク付けした中国「アート」作品のひどい言い分

  • 3

    「ワイン離れに歯止めがかからない」 フランス人が代わりに飲み始めたものとは?

  • 4

    死海沿岸を呑み込む7000個の陥没穴 縮む塩湖で地下…

  • 5

    1億8000万年前から生き残るクモヒトデの新種が発見…

  • 6

    アボカドは「悪魔の果実」か?──ブームがもたらす環…

  • 7

    台湾・ベトナムから始まる日本版ワクチン外交の勝算

  • 8

    ビットコイン暴落、投資家は「全てを失う覚悟を」(…

  • 9

    閲覧ご注意:ネズミの波がオーストラリアの農地や町…

  • 10

    ファイザーのワクチンで激しい副反応を経験した看護…

  • 1

    最愛の人の「生前の姿」をGoogleストリートビューで発見した人たち...その感動と特別さ

  • 2

    あなたがダイエットに失敗するのは内臓脂肪を燃やす栄養素を制限しているから

  • 3

    オーストラリア、一面クモの巣で覆われる

  • 4

    「ワイン離れに歯止めがかからない」 フランス人が代…

  • 5

    BTSだけじゃない! 中国を怒らせた「出禁」セレブたち

  • 6

    中国の原発で放射線漏れの疑い チェルノブイリを彷…

  • 7

    やっぱり危ない化粧品──米研究で半分以上に発がん性…

  • 8

    閲覧ご注意:ネズミの波がオーストラリアの農地や町…

  • 9

    「残業時間別」で見た日々の暮らしと仕事のリアル 10…

  • 10

    徴用工訴訟、ソウル地裁の却下判決 韓国法曹会は正…

  • 1

    4000回の腕立て伏せを毎日、1年間続けた男...何を目指し、どうなったのか

  • 2

    脳が騙される! 白黒の映像が、目の錯覚でフルカラーに見える不思議な体験

  • 3

    国際交流で日本にきた中国人200人に「裏切り者」のレッテル

  • 4

    最愛の人の「生前の姿」をGoogleストリートビューで…

  • 5

    デーブ・スペクター「日本は不思議なことに、オウン…

  • 6

    閲覧ご注意:ネズミの波がオーストラリアの農地や町…

  • 7

    あなたがダイエットに失敗するのは内臓脂肪を燃やす…

  • 8

    オーストラリア、一面クモの巣で覆われる

  • 9

    東京オリンピックの前向きな中止を考えよ

  • 10

    武漢研究所は長年、危険なコロナウイルスの機能獲得…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

STORIES ARCHIVE

  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月