最新記事

テクノロジー

コンコルドを超える超音速機は本当に実現する?

2016年12月24日(土)11時00分
メアリーアン・ラッソン

COURTESY BOOM

<ニューヨーク~ロンドンを超音速のマッハ2.2で飛び、約3時間15分で結ぶ構想の「夢の旅客機」XB‐1は、リチャード・ブランソンの肝煎り>(写真:これで米英間の日帰り出張も可能になるかも)

 航空から自動車レース、宇宙旅行まで、多彩な産業に参入し既成概念を打ち破ってきた英ヴァージングループの創業者リチャード・ブランソン。そんな彼がいま力を入れている新プロジェクトが超音速旅客機だ。

 先日には新しい機体の試作機「XB−1」が公開された。開発を手掛けるのは、ボーイングやスペースX、NASAで経験を積んだベテラン勢が立ち上げたブーム・テクノロジー(コロラド州)。コンコルド全盛時代を復活させるべく、ヴァージン・ギャラクティックの航空宇宙製造部門スペースシップカンパニーが開発を支援している。

 公開された試作機は、実際に造られる商業モデルの3分の1のサイズ。テスト飛行を行い、ニューヨーク~ロンドン間を約3時間15分で飛ぶ民間航空機を目指す。通常の民間機は時速980キロ未満と亜音速(音速以下)で飛ぶが、XB−1はその2.6倍の超音速、マッハ2.2(時速2335キロ)で飛ぶ。

 試作機には乗員2人とエンジニアしか乗れないが、商業モデルは乗客55人と乗員6人を収容できる大きさになる予定。来年後半にはテスト飛行をスタートし、23年までに商業運航を始めるのが目標だ。

【参考記事】ドローンで空を舞う世界初のサンタクロースが話題

 しかし、高コストが招く高い料金設定がネックになる恐れはある。ブーム社とブランソンは、大西洋を横断する便で往復5000ドルが妥当だと考えているようだが、一般の消費者は旅費をできる限り安く抑えたいと考えるもの。普通の航空機よりずっと速く目的地に着けるなら、高くても構わないというのは、プライベートジェットを所有するような大企業ぐらいだろう。

 そのため現実には、最大12人程度を運ぶ小型のプライベートジェットの形で利用される可能性も高い。

 だがブームのブレイク・ショールCEOは、料金を一般旅客機のビジネスクラス程度に抑えられると確信している。軽い新材料の導入や効率的なエンジン技術で、燃費が大幅に改善されたことも大きい。

「誰だって無料のシャンパンより、半分の時間で目的地に着くことを望むはずだ」と、彼は英ガーディアン紙に語った。「いずれ超音速機は、死ぬ前に一度乗ってみたいというような憧れの乗り物ではなくなるだろう」

[2016年12月20日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪GDP、第2四半期は前年比+1.8%に加速 約2

ビジネス

午前の日経平均は反落、連休明けの米株安引き継ぐ 円

ワールド

スウェーデンのクラーナ、米IPOで最大12億700

ワールド

西側国家のパレスチナ国家承認、「2国家解決」に道=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 10
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中