最新記事

南シナ海

南シナ海の防衛施設、中国は反撃準備する権利主張

2016年12月17日(土)20時30分

12月15日、中国が南シナ海に造成した人工島すべてに防衛施設を設置した可能性があると米シンクタンクAMTIが指摘したことを受け、同国は「必要な軍事施設」を置く権利があると反論している。写真は、AMTIが2月公表した、ヒューズ礁に建設された管制塔とみられる建造物が写る衛星写真(2016年 ロイター/CSIS Asia Maritime Transparency Initiative/DigitalGlobe/Handout via Reuters)

中国が南シナ海に造成した人工島7島すべてにミサイル迎撃システムを含む防衛施設を設置した可能性があると米シンクタンクが指摘したことを受け、同国は「必要な軍事施設」を置く権利があると反論している。

ロイターが14日伝えたアジア海事透明性イニシアチブ(AMTI)による指摘は、衛星写真の分析によって判明したものだ。

中国国防省は15日、ウェブサイト上での声明で、スプラトリー(中国名・南沙)諸島の島や岩礁における建造物は「主に民間使用」だと強調。「必要な軍事施設に関しては、主に防衛のためであり、正当かつ合法的」だと主張した。「自分の足元で威嚇行動を受けたら、反撃する用意はするものだろう」

米国は過去1年ほどの間で、南シナ海において「航行の自由作戦」に基づく艦船派遣を4回実施している。最近では10月に行われた、米国による一連の動きは、同海域で領有権の主張を強める中国への対抗措置とみられている。

<衝突への備え>

AMTIによれば、スプラトリー諸島で中国が造成した人工島の衛星写真には、対空砲のほか、巡航ミサイル攻撃から防衛するための近接防空システム(CIWS)のような装備が写し出されている。

また他の衛星写真からは、レーダーを備えているとみられる管制塔があることも明らかになったという。

中国政府は人工島を自国の領土とみなしており、限定的だが必要な防衛施設を備える権利があるとしばしば主張している。

AMTIディレクターのグレッグ・ポーリング氏によれば、同シンクタンクは、衛星写真に写る構造物の目的を検証するのに数カ月を費やしたという。

「今回初めて、それらが対空砲やCIWSの砲床だと自信をもって言える。以前は、これほど大規模かつ高度なシステムがあるとは分からなかった」とポーリング氏はロイターに語った。

一方、中国外務省の耿爽報道官はAMTIの報告を一蹴し、「もし自国の島に通常の施設や、領土防衛のための施設を備えることが軍事化とみなされるのであれば、南シナ海で艦隊が航行するのはどうなのか」と語った。

<周辺国の懸念>

南シナ海で中国と領有権を争う国の1つであるフィリピンは、AMTI報告は確認中と述べた。

「もし事実なら、南シナ海の通商路を利用するフィリピンや国際社会にとって大きな懸念だ」とフィリピンのロレンザーナ国防相は語る。「それは中国が同海域で軍事化を進めていることを意味し、良からぬことだ」

オーストラリアも、同海域での中国の行動に懸念を表明している。

同国のビショップ外相は声明で、「人工島の造成と軍事化の可能性は、領有権を主張する当事国と他の周辺国の間に緊張と不信感を生み出している」と述べ、当事国に威圧的な態度や現状を変えようとする一方的な行動をやめるよう求めた。

来年1月20日に米大統領に就任するドナルド・トランプ氏は、南シナ海における中国の行動を批判しており、オバマ大統領よりも強硬な手段に出る可能性を示唆している。

(Ben Blanchard記者、Michael Martina記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)



120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トルコの和平工程表承認、PKK関係者が「重要な一歩

ビジネス

ラガルドECB総裁、職務に専念と同僚らに伝達 即時

ビジネス

スイス中銀、銀行の流動性支援強化で詳細発表

ワールド

韓国の尹錫悦前大統領に無期懲役、内乱首謀で地裁判決
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポーランドが「核武装」に意欲、NATO諸国も米国の核の傘を信用できず
  • 2
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 3
    中道「大敗北」、最大の原因は「高市ブーム」ではなかった...繰り返される、米民主党と同じ過ち
  • 4
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方..…
  • 5
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 6
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 7
    生き返ったワグネルの「影」、NATO内部に浸透か
  • 8
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 9
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 10
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 4
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 10
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中