最新記事

報道写真

写真が語る2016年:石につながれたインドの幼児

2016年12月26日(月)08時10分

12月7日、インド西部グジャラート州最大都市アフマダーバードの建設現場で、4月に石にひもでつながれた子どもと出会った。母親によれば、子どもの安全のためにはそうするしか他に選択肢がないのだという(2016年 ロイター/Amit Dave)

インド西部グジャラート州最大都市アフマダーバードの建設現場で4月、石にひもでつながれた子どもと出会った。母親によれば、子どもの安全のためにはそうするしか他に選択肢がないのだという。

2016年を象徴する一連の写真について、ロイター・カメラマンが撮影当時の様子を語る。

撮影したカメラマン:Amit Dave

インド西部アフマダーバードで日常生活の風景を撮影中、労働者たちが重そうに電気ケーブルを引っ張っているのが目にとまった。面白い写真が撮れるかもしれないと私は思った。光の具合が良くなかったので、しばらく待っていた。

労働者の子どもたちが道端で走り回って遊んでいたが、たった独りで座っている子どもがいた。その理由が知りたくて、私はそちらに歩いていった。

当時生後15カ月のシバニちゃんは、足首をビニールひもで縛られ、建設現場の石につながれていた。彼女の母親がそうしたのだ。

裸足で埃まみれのシバニちゃんは、気温40度を超える暑さのなか、1日に9時間も「注意」と書かれたひもにつながれたままでいる。

母親のサルタ・カララさんは、シバニちゃんが泣いても、石につなぐしか他に選択肢はないと話す。カララさんと夫はシフトごとに250ルピー(約430円)稼ぐために、同市の電気ケーブル工事で穴を掘る仕事をしている。

「道路に出ていかないようにつないでいる。下の息子はまだ3歳半なので、妹のお守りはできない」と、23歳のカララさんは言う。「この一帯は出入りが激しい。他に方法がない。彼女の安全のためにしている」

子どもたちは通常7─8歳まで親と暮らすが、その後は祖父母のもとに送られるという。

ひもが足からぶら下がっているシバニちゃんを抱きかかえるカララさんは、マネジャーたちが見て見ぬふりをしたと話す。

「彼らは私たちや子どもたちのことなど気にしない。気になるのは自分たちの仕事のことだけだ」



[7日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米FTC、エクソンのパイオニア買収を近く判断か=ア

ビジネス

インタビュー:為替介入でドル160円に「天井感」=

ビジネス

新興国債券、米利下げ観測後退とドル高が圧迫=アムン

ワールド

バイデン氏にイスラエルのラファ攻撃阻止要求、身内の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中