最新記事

ニュース接触

日本人のニュースメディア接触、「非ソーシャル」で「受動的」

2016年11月22日(火)14時30分
田中善一郎(メディア・パブ)

アジア4国と欧米は似通っているが、日本だけは違っている

 このように、オンラインメディア、中でもソーシャルメディアを介してニュースソースに接触するユーザーの割合が日本は低くなっている。でも、極端な差があるわけではない。それよりも、オンラインメディアの接触の仕方に日本人の特異性が際立っていることに、注目したい。

 オーディエンスがこの1週間で、どのようなチャンネルを介してオンラインニュースを見つけたかを、複数回答させた結果を図3に示す。つまり、オンラインニュースとの出会いの場(チャンネル)を答えさせている。実際のアンケートでは9種のチャンネルを選ばせていたが、図3ではそのうちの4種のチャンネルの利用度だけを抜き出して掲載した。

 ダイレクト・エントリー(ニュースブランドのWebサイトやアプリに直接アクセス)でオンラインニュースに接している割合は、前回の26か国を対象にした調査で、日本が12%とずば抜けて低かった。今回のアジア4国との比較でも、香港(42%)、マレーシア(45%)、シンガポール(36%)、台湾(34%) と大きく差をつけられている。新聞社やテレビ局などの伝統マスメディアのニュースサイトが、日本ではオンラインニュースの主流となってこなかったためである。

 逆にアグリゲーターでオンラインニュースに接している割合は、日本が43%と飛びぬけて高っかったが、やはり、香港(12%)、マレーシア(15%)、シンガポール(10%)、台湾(12%)と比べても、抜きんでいる。アグリゲーターであるヤフーニュースが圧倒的なシェアを握っていたからである。さらにモバイル時代に入っても、スマートニュースのようなアグリゲーターのニュースアプリが日本では受けた。こうしたアグリゲーターでは、ニュースブランドのサイトに直接行かなくても、複数のマスメディアが提供するニュースをまとめて閲覧できる。受身的であるだけに、中高年層にもなじみやすい。例えばスマートニュース・ユーザーの年齢層分布でも、50代以上が46%も占めている。

 先にも述べたように、ソーシャルメディアをオンラインニュースとの出会いの場としているユーザーの割合が、日本は低い。香港(38%)、マレーシア(57%)、シンガポール(53%)、台湾(54%)に対して、日本は17%である。

ReutersAsiaComingAcrossNews.png

図3 オンラインニュースと出会うチャンネル。


ニュース記事に参加する度合い、日本人が最も希薄

 ニュースメディアは昔のように提供者主導の一方向ではなくて、消費者(ユーザー)主導の双方向性メディアとなっている。今やユーザーがニュースメディアに参加するのが当たり前になっているのだ。そこで、ニュース記事にどのような形で参加しているかを、アンケートしている。参加する場としては、ニュースブランドのWebサイトよりも、ソーシャルメディアが中心となっている。図4では、ソーシャルメディアでニュース記事に参加している回答者の割合を、項目別に示している。

 ニュース記事にコメントする(Comment on a news story in a social network)割合は、香港(24%)、マレーシア(22%)、シンガポール(13%)、台湾(26%)に対して、日本は6%であった。

 次のニュース記事をシェアする(Share a news story via social network)割合は、香港(28%)、マレーシア(32%)、シンガポール(27%)、台湾(34%)に対して、日本は9%。

 またニュースに関連する写真や動画を投稿したり送る(Post or send a news related picture or video to a social network)割合は、香港(12%)、マレーシア(16%)、シンガポール(11%)、台湾(15%)に対して、日本はわずか3%であった。

ReutersAsiaParticipationNews.png

図4 ニュース記事に参加する。

 このように、アジア4国のオンラインニュース・ユーザーは、ニュース記事への参加意識が米国並みに高い。一方で日本人の多くは、アグリゲーター・ニュースサイトが一方向で提供してくれるニュースを受け取るのに満足し、ニュース記事に能動的に参加することをあまりは好まないようだ。

 ロイターは先の26か国を対象にした調査のレポートで、ニュース接触に関して日本の消費者が26カ国中最も受動的で、最も能動的でない国民としてまとめていた。今回は、アジア4国に日本、米国、英国、韓国、オーストラリアを加えた9国を対象に、同じようにニュースに対して能動的な行動をとるオーディエンスの割合を比較した。それをグラフ化したのが図5である。ニュースの参加者を、最も能動的なProactive、その次に能動的なReactive、そして受動的なPassiveとの分けて、国別に内訳を示している。ここでもニュースに対して受動的な行動をとるユーザーの割合が、日本が9国の中で最も高いと結論付けている
 
ReutersAsiaOverallParticipationNewsEFBC91.png

図5 ニュースメディアへの参加態度。能動的か受動的か

 ニュース接触においても、受動的で保守的で非ソーシャルであるのは、国民性に起因しているだろう。良し悪しは別にして、グローバルに見て日本人のメディア接触が、多くの国とちょっと違うのだということを、認識しておいたほうがよさそう。

◇参考
NEW REPORT EXAMINES ONLINE NEWS HABITS ACROSS ASIA-PACIFIC REGION(Reuters Institute for the Study of Journalism)
日本人のニュースメディア接触、先進国の中で際立つ特異性、ロイター調査が浮き彫りに(メディア・パブ)

※この記事は、メディア・パブからの転載です。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米製造業新規受注、9月は前月比0.2%増 関税影響

ワールド

仏独首脳、米国のウクライナ和平案に強い懐疑感 「領

ビジネス

26年相場、AIの市場けん引続くが波乱も=ブラック

ワールド

米メタ、メタバース事業の予算を最大30%削減と報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 6
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 7
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 8
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 9
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 10
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 10
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中