最新記事

2016米大統領選

トランプ、通商・移民改革に意欲 実現には議会指導部と関係修復が必須

2016年11月10日(木)11時34分

 トランプ氏は、メキシコに壁建設費用を負担させるとしているが、米大統領といえども外国に無理やり費用を出させる権限はない。

 より広範囲な移民政策としては、全体の移民の数を減らし、海外からの熟練労働者の受け入れを抑制する方向に動く可能性がある。そうなれば、移民法緩和を求めてきた経済界やヒスパニックには打撃となる。

ヘルスケア

 医療保険制度改革法(オバマケア)を撤回し、代わりに各州にメディケイド(低所得者・障害者向け公的医療保険)の運営で裁量拡大を主張している。州をまたいだ保険販売も容認するとしている。

 トランプ氏は議会の協力を得る必要があるが、上院で法案廃止に必要な60票の賛成票を共和党が確保するのは困難とみられる。また仮に数百万人に保険を提供した法律を廃止すれば、共和党は厳しい批判を受けかねない。

 ただ、オバマケアの成功を目指さない人物を担当に起用するなど、トランプ氏には制度を弱める方法がいくつもある。

税と歳出

 大幅な減税を約束する一方で、歳出の3分の1以上を占める医療・年金プログラムは維持する方針を示している。この組み合わせは財政赤字の急増につながる恐れがある。

 インフラと国防予算を増やすが、医療と年金以外の支出は毎年1%削減することを提唱している。

 これまでに税率を引き下げることや税制の抜け穴をふさぐことを目指してきた議会共和党から大きな支援が期待できる。だが、現在税制の優遇措置を受けている住宅保有者や企業などから強い抵抗を受けるだろう。

 国民の支持が厚い給付プログラムを維持すると約束しているが、財政悪化を懸念する保守派議員が反発する公算が大きい。

金融規制

 金融危機後の2010年に成立した米金融規制改革法(ドッド・フランク法)を「解体する」と約束しているが、詳細は明らかにしていない。

 共和党は公約で金融機関の商業銀行業務と証券業務の兼営を禁じた1930年代のグラス・スティーガル法の復活を掲げている。トランプ氏の選挙対策本部長を務めていたポール・マナフォート氏はこれを支持する考えを示していた。

 ただ、共和党議員の多くはグラス・スティーガル法の復活に反対している。

[ワシントン 9日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、9月米利下げ観測強まる

ビジネス

米GDP、第2四半期改定値3.3%増に上方修正 個

ワールド

EU、米工業製品への関税撤廃を提案 自動車関税引き

ワールド

トランプ氏「不満」、ロ軍によるキーウ攻撃=報道官
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ」とは何か? 対策のカギは「航空機のトイレ」に
  • 2
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 5
    「ガソリンスタンドに行列」...ウクライナの反撃が「…
  • 6
    米ロ首脳会談の後、プーチンが「尻尾を振る相手」...…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「風力発電」能力が高い国はどこ…
  • 9
    【クイズ】1位はアメリカ...稼働中の「原子力発電所…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 7
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 8
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 9
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 10
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中