最新記事

テクノロジー

中国企業の買収攻勢に警戒強めるドイツ

2016年11月1日(火)19時00分
エミリー・タムキン

笑顔で握手するメルケル独首相(左)と習近平中国国家主席 Damir Sagolj-REUTERS

<中国熱烈歓迎のイギリスやフランスと違い、自国の技術流出を警戒し始めたドイツは、中国のファンドによる独半導体メーカーの買収に待ったをかけた>

 ドイツの副首相兼経済・エネルギー相、ジグマール・ガブリエルはこれから数日間、人々の関心を集めそうだ。

 ドイツ政府は先週、中国国有の投資ファンド、福建芯片投資基金(FGC)による独半導体企業アイクストロンの買収に対する認可を取り消した。アメリカの諜報機関がドイツ政府に対し、この売却で中国は軍事転用可能な技術を手に入れることになると警告したからだ。

 ガブリエル経財相は、今回の決断に先立つ数カ月前から、保護主義的な発言を強めつつあった。ヨーロッパのハイテク産業を「何も考えずに売り払うべきではない」と主張してきたのだ。ドイツの国際公共放送「ドイチェ・ヴェレ」の報道によると、中国政府は事態の変化に大きな懸念を抱いていると表明した。

【参考記事】ライフラインを叩き売るギリシャ、群がる外資

 ヨーロッパの経済大国ドイツが待ったをかけるまで、その多くが国有である中国企業各社は、ヨーロッパで嬉々として買収と投資を繰り返してきた。ブルームバーグによると、中国企業が今年これまでにドイツ企業の買収を表明もしくは実施した額は、120億ドルにのぼるという。

盛り上がるコンテナ港

 ヨーロッパでの買収や投資は、中国と中央アジア、インド洋、ヨーロッパを結びつける中国の新シルクロード構想の要になる。現地市場へのアクセスを得ることは中国政府にとって重要だ。中国とフランスは、海外共同投資のためのファンドを発表した。中英間貿易は活況を呈している。

 そう、一部のヨーロッパ人は中国マネーを歓迎してきた。イギリスは中国の投資に対して熱烈な求愛活動を行ってきたし、いまはフランスが同じことをやっている。そして一部の国々とセクター、たとえばオランダのロッテルダムやギリシャのピレウスのような多忙なコンテナ港などにとって、中国の気前の良さは実際に役に立っている。しかし、中国マネーには地政学的計算が付随するという不安が、ヨーロッパで大きくなり始めている。

【参考記事】模倣(パクリ)は創造の始まり――マイセン磁器の歴史

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科の社債権者、返済猶予延長承認し不履行回避 

ビジネス

ロシアの対中ガス輸出、今年は25%増 欧州市場の穴

ビジネス

ECB、必要なら再び行動の用意=スロバキア中銀総裁

ワールド

ロシア、ウクライナ全土掌握の野心否定 米情報機関の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 10
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中