最新記事

右派

トランプ次期大統領とともに躍進する右派ニュースサイト「Breitbart」

2016年11月18日(金)15時50分
田中善一郎(メディア・パブ)

フランス、ドイツ版も設立

 ともかく、トランプ氏の勝利により、Breibartが一段と勢いづくのは間違いない。Breibart会長であり、トランプ陣営の選挙対策責任者であったバノン氏は、トランプ次期大統領の上級顧問と首席戦略官を兼務することになっている。既存のマスメディアを極度に嫌っていたトランプ氏が、どのようなメディア対策を講じてくるか気になる。当然、BreibartはもちろんとしてFox Newsなどが優遇されるであろうが、NYTimesのようなリベラルなメディアは冷遇されそうである。

 Breibartはすでに、図1で誇示しているように、3700万人の月間ユニークユーザー数を擁しているが、トランプ勝利の追い風に乗って、さらなる飛躍を目指す。 Alex Marlow編集長がReutersに語ったところによると、米国内で多くのジャーナリストを採用し始めており、中でもポッドキャストや動画といったマルティメディア・オペレーションを強化し、大量の政治ニュースを発信していきたいと意気込む。新たにTV番組も立ち上げる。

 海外展開にも力を入れる。移民/難民やグローバル化に関連して失業/格差問題が深刻化する欧州各国で、ポピュリズム政党が台頭している。フランスの極右政党である国民戦線のルペン氏はその代表格である。トランプ氏やバノン氏が標榜する白人ナショナリズム主義が、欧州でも拡大する素地が整ってきた。そこで、Breitbart Franceと Breitbart Germanyを立ち上げることになった。この設立する狙いを、欧州の主要2国で右派政治家が選ばれるように支援すること、とバノン氏が語ったという(Reutersの記事より)。

【参考記事】フランス極右政党ルペン党首、「トランプのような勝利望む」

 また、すでに海外展開の成功事例があるとも主張する。2013年にBreitbart Londonを立ち上げていた。英国のEU離脱のキャンペーンが、ビジネスになると見たからだ。EU離脱運動が盛り上がるにつれて、Breitbart Londonの読者も増えていき、バノン氏が営業して獲得した広告も増えていった。英国のEU離脱を問う国民投票が実施された6月23日には、Breitbart Londonへのトラフィックが殺到したという。

 要するに、トランプの勝利も英国のEU離脱も、Breitbartが大きな役割を演じたと言いたいのだろう。さらに同じ流れを、フランスでもドイツでも・・・。トランプ新大統領のメディア戦略を注視していきたい。

◇参考
Online, Everything Is Alternative Media(NYTimes)
ドナルド・トランプ氏、「最も危険な政治フィクサー」起用で過激路線復活か(Huffington Post Japan)
Who are the Biggest Politics Publishers on Social?(NewsWhip blog)
Trump strongly considering Steve Bannon for chief of staff(CNN)
Exclusive: Riding Trump wave, Breitbart News plans U.S., European expansion(Reuters)
Breitbart Beats NY Times, CNN, and Fox News for Election Day Facebook Engagement(Bleitbart)

※この記事は、メディア・パブからの転載です。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-タイのシリキット王太后が93歳で死去、王室に

ワールド

再送-トランプ米大統領、日韓などアジア歴訪 中国と

ビジネス

アングル:解体される「ほぼ新品」の航空機、エンジン

ワールド

アングル:汎用半導体、供給不足で価格高騰 AI向け
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...装いの「ある点」めぐってネット騒然
  • 2
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 3
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月29日、ハーバード大教授「休暇はXデーの前に」
  • 4
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 5
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 6
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 7
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 10
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中