最新記事

南シナ海

アメリカ、南シナ海「航行の自由作戦」に米本土所属第3艦隊も派遣

2016年10月25日(火)20時02分

10月25日、米海軍が今月中旬に南シナ海で実施した「航行の自由作戦」は、初めて第3艦隊の指揮下で行われたことが明らかになった。写真は南シナ海で2015年5月撮影。提供写真(2016年 ロイター/U.S.Navy)

 米海軍が今月中旬に南シナ海で実施した「航行の自由作戦」は、初めて第3艦隊の指揮下で行われたことが明らかになった。中国が岩礁を埋め立て、北朝鮮が弾道ミサイルの発射を繰り返す中、米国は西海岸サンディエゴを母港とする同艦隊の任務を西へ広げ、アジアで二正面作戦に対応できる態勢を整えようとしている。

 米海軍は21日、イージス駆逐艦「ディケーター」を南シナ海に派遣した。複数の関係者によると、第3艦隊の指揮下で西沙(パラセル)諸島周辺を航行し、自国海域とする中国の主張を認めない姿勢を示した。

 第3艦隊の指揮の下、南シナ海で米海軍が「航行の自由作戦」を行ったのは初めて。これまで3回実施してきた同作戦は、いずれも日本の横須賀を母港とする第7艦隊の指揮下で行ってきた。

 米海軍は日付変更線を境に太平洋を東西に分割。東半分を第3艦隊、西半分を第7艦隊が管轄している。第3艦隊の艦艇が西太平洋で活動する際は、第7艦隊の指揮下に入る。

 しかし、中国が南シナ海や東シナ海への進出を強め、北朝鮮が核とミサイルの開発を着々と進める中、米海軍は不安定さを増すアジアへの関与を強めようと、境界線の撤廃を検討してきた。

 米海軍の組織再編をよく知る関係者は、朝鮮半島やフィリピン周辺など、アジアで同時に事態が悪化した場合でも、対処が可能になると指摘する。同関係者は「今回を手始めに、(第3艦隊による)作戦の頻度は定期化していくだろう」と話す。

 第3艦隊で報道対応をするライアン・ペリー氏はロイターの取材に対し、ディケーターは半年前に南シナ海へ配備されたと回答。第3艦隊が任務を広げつつあることも認めた。

 米海軍が南シナ海で航行の自由作戦を行ったのは4回目。21日はスカボロ―礁の領有権をめぐって中国と争うフィリピンのドゥテルテ大統領が、北京を訪問している最中だった。

 (ティム・ケリー 翻訳編集:久保信博 編集:田巻一彦)

[東京 25日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請件数、1.3万件減の22万400

ビジネス

ECBが金利据え置き、4会合連続 インフレ見通し一

ビジネス

米11月CPI、前年比2.7%上昇 セールで伸び鈍

ワールド

米、台湾への武器売却を承認 ハイマースなど過去最大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 7
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 8
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 9
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 10
    欧米諸国とは全く様相が異なる、日本・韓国の男女別…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中