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人類が完全なる人工心臓を手にする日はどこまで近づいた?

2016年10月8日(土)17時51分
ケイト・ローレンス ReadWrite[日本版]編集部




新しい心臓は精密科学ではない

 人工心臓移植の成功は、いまのところ研究期間中におこなった4名の患者のフィジビリティトライアルの成功をもって語られているものであり、ここでいう成功とは「30日以上の生存」を指す。彼ら4名は現在、すでに亡くなっている。

 Carmatの1人目の移植患者は術後2カ月半の2014年3月に、おそらくデバイスの不良のため亡くなった。2人目は移植後9カ月の2015年5月に亡くなっている。Carmatによると、この2人の死は「血液のデバイスが作動するための流体を保持する部分へわずかな漏れが発生し、電子エンジンコントロールに支障を生じたため」だとされている。

 3人目は、「慢性の腎臓疾患が引き起こした呼吸不全」で9カ月後に亡くなった。患者は「さまざまな重病に苦しんでおり、特に腎臓疾患については心臓移植以前にそのように診断され、定期的な通院を必要としていた」という。このとき患者が亡くなった後も心臓は動き続け、「医療チームは患者の死亡を確認したうえで人工心臓を止めた」と言われている。最後の4人目は、術前からの持病が術後に合併症を引き起こし亡くなった。

 Carmatはヨーロッパでの承認を得るため、25名の患者を対象に臨床試験をおこなう予定だ。「今回の目標は、術後3カ月以上の生存だ」とCarmatのCEO マルセロ・コンヴィティ氏は語る。

「2017年内にすべてのデータを提出し、2018年には欧州基準を採用するいくつかの国での販売したいと考えている」

人工心臓と暮らす未来?

 誰かの心拍がスマートフォンによって刻まれる、などという未来学者の夢の実現にはまだまだ遠いことは明らかだ。International Business Timesによると、超人間主義者 ゾルタン・イストヴァン氏は「将来、人工心臓はWiFiを備え、スマートフォンを使って心拍数を状況に合わせて変えることができるようになる」と予見しているようだ。また、彼は人工心臓がハッキングされるリスクも認めている。

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