最新記事

イギリス経済

EU離脱でイギリスの銀行の影響力凋落、政府も耳貸さず

2016年10月26日(水)10時45分

 メイ首相が今月ハードブレグジット寄りの姿勢を示したことは、銀行業界に衝撃を与えた。

「金融サービスを取り巻く環境が変わったのは間違いない」と言うのは、ある国際銀行の上席幹部だ。政府が銀行を見る目が「180度転換した」という。

 別の銀行関係者は、政府は特定の産業を特別扱いしないと言いながら、英国のEU残留を強く支持してきた日産自動車には宥和的な姿勢を示しており、金融業界に対する厳しい態度とは対照的だと話した。

ロビー攻勢が裏目

 金融業界は英国内総生産(GDP)の約1割を占め、年間600億ないし670億ポンドの税金を納めている。業界団体「ザシティUK」の委託で行われた調査によると、ハードブレグジットになった場合、業界の収入は最大380億ポンド減り、英国は7万5000人の雇用を失いかねない。

 しかし4カ月間にわたる銀行のロビー攻勢も、一部で裏目に出ているのが実態だ。

 財務省はEU離脱交渉における優先順位を決めるため、異なるシナリオ下で各業界の収入や雇用、納税にどのような影響が及ぶかについて徹底的な調査を行っている。政府高官らによると、銀行はそのスケールが分かっていないという。

 ある関係者は、金融機関は呆れるほど多くの要求リストを持ってきて、自分たちの意見に耳を貸してもらえないとすぐに切れるとこぼす。

 金融業界が過去に発した警告は結局現実化しなかった、という思いも高官の間にはあるという。

 世界金融危機の後、多くの銀行は税金を上げたり規制を厳しくしたりすれば海外に拠点を移す、と政府を脅した。その前には、英国がユーロに加盟しなければロンドンが国際金融センターとしての地位を失うと警鐘を鳴らしていた。

 政府高官らと話したあるバンカーは「政府は今度こそ影響を過小評価している。こけ脅しじゃないんだ」と訴える。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 8
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中