最新記事

中央アジア

ウズベキスタン独裁者の死はグレート・ゲームの導火線か

2016年9月13日(火)16時40分
河東哲夫(本誌コラムニスト)

 最近では、中央アジアで中ロ両国が勢力争いを始めたと言われるときもある。中国は「一帯一路」(現代版シルクロード経済圏構想)と称し、この地域の経済利権をあさろうとしている。この地域に資金需要は大きいものの、問題は経済的合理性を持つ案件は少ないことだ。

 また中国は、中央アジアの安全保障を肩代わりする姿勢は示していない。中ロ両国は机の下で足の蹴り合いくらいはしても、衝突はしないだろう。両国とも、相争って主敵アメリカに対する立場を悪くするようなことは絶対避ける。

 つまり中央アジアでは、権力継承をめぐってテロや暴力事件は起きるだろうが、グレート・ゲーム、あるいはアフガニスタンばりの長期内戦は起こるまい。

【参考記事】トルコとロシアの新たな蜜月

 日本の態度はどうか。安倍晋三首相は昨年10月、中央アジア5カ国を一度に歴訪した。それ以前からもウズベキスタン、カザフスタンの両国を中心に、日本は累積約5000億円のODAを供与。造ったインフラ、工場などは多数に上る。

 中央アジア諸国は、ロシアや中国といった一国のみに依存して自主性を失うことを嫌う。この点、日本は格好のオプションを提供している。中央アジアは中国やロシアの裏庭に位置する。この5カ国が自主性を持ち、日本を支持してくれれば、日本の対ロ・対中外交にとっても力となる。

 なかでもウズベキスタンが日本に寄せる期待には大きなものがあり、実際日本も協力を惜しまなかった。カリモフの業績を大事にしていきたい。

[2016年9月13日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏が英国到着、2度目の国賓訪問 経済協力深

ワールド

JERA、米シェールガス資産買収交渉中 17億ドル

ワールド

ロシアとベラルーシ、戦術核の発射予行演習=ルカシェ

ビジネス

株式6・債券2・金2が最適資産運用戦略=モルガンS
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがまさかの「お仕置き」!
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが.…
  • 8
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 9
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中