最新記事

ISIS

ISISの海外テロ責任者アドナニの死でテロは収まるか

2016年9月1日(木)18時47分
ジャック・ムーア

テロ拡散戦略の中枢を担っていたアドナニ U.S. Department of State/REUTERS

<ISISの海外プロパガンダ、インターネットを使った新兵勧誘、ローンウルフを焚きつけた欧米での大規模テロ──すべての責任者がナンバー2のアドナニだった>

 テロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)は30日、同組織の公式メディア「アマク通信」を通じて、海外でのテロ戦略とインターネット上のプロパガンダを指揮していた幹部、アブ・ムハンマド・アル・アドナニ報道官が死亡したと発表した。声明によると、アドナニはシリア北部の都市アレッポで「作戦視察中」に死亡したという。

 ロシア国防省はアドナニがロシア軍の空爆で死亡したと発表したが、米国防総省はこれを否定、標的を絞った米軍の空爆で死んだと主張しており、真相は不明だ。いずれにせよ、支配地域を失いつつあるISISにとって、アドナニの死が大きな痛手となることは確かだ。

 アドナニ(本名はタハ・ソブヒ・ファラハ)は、カリフを自称するISISの最高指導者アブ・バクル・アル・バグダディに次ぐナンバー2の幹部だった。ISISの海外責任者として、世界中のシンパにテロを呼び掛けてきた。

海外への攻撃を担当

 ヨーロッパ、アジア、アラブ諸国で残虐なテロを行う下部組織の監督を担当し、アドナニが指揮するISISの対外テロ機関「エムニ」は、多数の死者を出したパリの同時多発テロ、ブリュッセルの連続テロ、イスタンブールの空港テロなどに関与したとみられる。

【参考記事】パリ同時テロは、ISISの軍事的弱体化のしるし

 ローンウルフ(一匹狼)型のテロも呼び掛けた。今年6月にフロリダ州オーランドのクラブで起きた銃乱射事件、7月にドイツのバイエルン州で起きた銃乱射と列車内の襲撃事件、フランスで6月に起きた警官夫婦殺害と7月に起きた神父殺害など、いずれも犯人はアドナニのメッセージに触発されたといわれる。

 ISISが発表する動画の検閲官も務めていた。残忍な処刑の動画をじっくり見比べ、最も効果的な時期に、最も衝撃的な動画を公開させていた。
 
 イラクとシリアで支配地域を失いつつあるISISは、アドナニの指揮下、世界中の支持者にテロを実行させ、メディアに派手に取り上げられることで、存在感をアピールしようとしてきた。

【参考記事】連日の大規模テロ、ISISの戦略に変化

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米マイクロソフト、英国への大規模投資発表 AIなど

ワールド

オラクルやシルバーレイク含む企業連合、TikTok

ビジネス

NY外為市場=ドル、対ユーロで4年ぶり安値 FOM

ワールド

イスラエル、ガザ市に地上侵攻 国防相「ガザは燃えて
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがまさかの「お仕置き」!
  • 3
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    出来栄えの軍配は? 確執噂のベッカム父子、SNSでの…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中