最新記事

ワークプレイス

光と優秀な人材を取り込む「松かさ」型ラボ

2016年8月12日(金)19時33分
WORKSIGHT

WORKSIGHT

国の「医療ハブ」目指す都市の中心に完成した研究施設[SAHMRI] (写真:このエリアは、将来的に大学病院の研修施設や研究機関などが集約された「医療ハブ」になる。)


[課題]  国際的な競争力のある医療ハブになる
[施策]  研究に打ち込める健康的な環境づくり
[成果]  優秀な人材が集まる象徴的な場に

 南オーストラリア州の州都アデレード。国の「医療ハブ」を目指すこの街は、大学病院や各種研究施設が集結するエリアを開発中だ。

 なかでもいち早く完成した「サムリ(正式名称はSouth Australian Health and Medical Research Institute)」は、エリアの中心に位置する州の医療研究所である。アボリジナルヘルス(病院に行く文化のない先住民アボリジニの健康管理)、癌、母子の健康、心臓の健康、感染症と免疫力、精神と脳、栄養学とメタボリズムの7つを研究テーマに持つ。

 インフラ・キャプタルプラン・ディレクターのミッシェル・ゲオルギュー氏によれば、建物は彼らにとって「マーケティングツールであり、リクルートメントツール」の意味もある。つまり、欧米の主要都市から遠く離れた南半球の"地方都市"であるアデレードに、世界中の優秀な頭脳を集めるための施設だ。

南オーストラリア初の医学研究施設

 というのも、2007年以前のアデレードでは、各病院が個別に研究を行うのみで、専門的な研究施設が存在しなかった。結果、研究者たちは職を求めて南オーストラリアを去り、7年間で5%減という事態に。これを懸念した政府は、研究者を連れ戻すべく、2億ドルの資金を投じて南オーストラリア初の医学研究用施設を建設することにしたのである。

「プロジェクトが始まる前、サムリの取締役が言ったのは『世界中に知られるものをアデレードにつくってください』。非常にやる気を刺激されるビジョンです。クライアント自身がクリエイティビティの既成概念を超えることはまれ。でも彼らは、創意工夫するスペースを与えてくれたんです」(ゲオルギュー氏)

【参考記事】生活ありきの仕事環境がクリエイティブ・カルチャーを生む

wsSAHMRI-1.jpg

(左)窓のないオフィスビルを大きな外壁が覆っており、空間の一体感がより増している。(右)外壁を構成している三角形の開口部。日差しの角度を調整する庇が取り付けられている。

wsSAHMRI-2.jpg

執務エリアと研究エリアを隔てるものはガラス壁1枚。研究者と執務者がそれぞれ孤立しないよう配慮しながら、安全性とデザイン性を両立させた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中