最新記事

欧州

オーストリアにEU初の極右政権が生まれる?

2016年8月4日(木)16時40分
ジョシュ・ロウ

Heinz-Peter Bader-REUTERS

<オーストリアの憲法裁が大統領選のやり直しを命じ、この秋再選挙が実施される。前回5月の決選投票では僅差で敗北した極右政党の候補者がいま支持率を伸ばしていて、EU初の極右政権が誕生する可能性が高まってきた>(写真は支持率を伸ばす自由党の大統領候補ホーファー)

 今年5月に決選投票が行われたオーストリアの大統領選挙では、反EUを掲げる極右政党の候補者が僅差で敗れた。だがEUに安堵が広がったのもつかのま、憲法裁判所が選挙のやり直しを命じ、極右の候補が再び支持を拡大している。

 移民排斥や反EUを掲げる極右ポピュリズム政党「自由党」のノルベルト・ホーファー国民議会(下院)第3議長は、5月22日に行われた大統領選の決選投票で、リベラル政党「緑の党」の前党首で、無所属で出馬したアレクサンダー・ファン・デア・ベレンに約3万1000票の僅差で敗れた。

 自由党はこの結果を不服として憲法裁に提訴。憲法裁は7月1日、故意の不正は認められないものの、開票手続きに不備があり、選挙結果に影響した可能性があるとして、投票のやり直しを命じた。再選挙はこの秋、実施される見通しだ。

【参考記事】オーストリアが紙一重で「極右」大統領を阻止 右翼ポピュリズムが欧州を徘徊する

 世論調査会社のギャラップが今週発表した調査結果によると、ホーファーの支持率は52%で、7月初めの前回調査と比べて1ポイント上昇。ベレンの支持率48%を4ポイント上回っていた。

 5月にホーファー敗退が伝えられたときには、EU全域に安堵が広がった。ホーファーが当選すれば、EU各国で勢力を拡大しつつある極右ポピュリズム政党に大きな弾みがつく。オーストリアの大統領は政治的な実権は小さいものの、これまで極右政党の候補がEU加盟国の国家元首になったことはない。ホーファーがこの前例を破れば、EUの政治指導者はイギリスのEU離脱に続いて、またもや手痛い敗北を喫することになる。

 5月の決選投票後の分析では、オーストリアの有権者を二分する対立の構図が明らかになっている。教育レベルの高い都市部の有権者はベルンを支持し、単純労働の従事者や地方在住の有権者の多くはホーファーを支持している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米貿易赤字、6月は16%減の602億ドル 対中赤字

ワールド

米、ロシア「影の船団」への追加制裁を検討=報道

ワールド

ヒズボラ指導者、レバノン戦闘再開なら「イスラエルを

ワールド

イスラエル首相、治安トップと会議 ガザ全面制圧念頭
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「原子力事…
  • 8
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    永久欠番「51」ユニフォーム姿のファンたちが...「野…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 6
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 9
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 10
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 4
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 5
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 6
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 7
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 8
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 9
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 10
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中