最新記事

内戦

シリア軍の包囲網のなかで住民は霞を食べている?

2016年8月2日(火)19時16分
ホサム・アル・ジャブラウィ(シリア人市民ジャーナリスト)

 ダラヤの住民は包囲下に置かれた当初から、たとえ土地は限られていても、自分たちで栽培できる作物はなんでも育てる覚悟を決めていた。地元の議員によると、ダラヤではどの家庭でも、作物を栽培できそうなスペースがあれば隈なく耕し、小麦やホウレンソウを育てている。

 政府軍からの度重なる砲撃に見舞われた住民は、燃料を確保するため、ありあわせの資源で作れる燃料の開発にも取りかかった。ジャーナリストのアブドゥル・ハミト・アルダラニによると、ダラヤでは石油の供給が遮断されて以来、住民がプラスチック製品を溶かして抽出した自家製の油(通称「ミクスチャー」)を、機械や電化製品の燃料として使用する動きが広がっている。

 生産にはプラスチックを燃やすだけ。ディーゼルや石油、産業用の潤滑油などが抽出できる。品質は悪くないが、一つ間違えば爆発しかねない。

 現地を取材したジャーナリストのアイハム・アルオマンは、そうした小さなプロジェクトを通じて人々が仕事に戻り、地域経済が動き出せば、包囲下の厳しい生活のなかでも活気を取り戻せると強調した。政府軍から兵糧攻めを受け、爆弾も落ちてくるという理不尽な状況下でも、人は努力する。だがそれにも、限度がある。

This article first appeared on the Atlantic Council website.
Hosam al-Jablawi is a Syrian citizen journalist.

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米国防長官、中東の安定強調 イスラエルなどと電話協

ビジネス

中独は共通基盤模索すべき、習主席がショルツ首相に表

ビジネス

中国GDP、第1四半期は前年比5.3%増で予想上回

ワールド

米下院、ウクライナ・イスラエル支援を別個に審議へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 5

    キャサリン妃は最高のお手本...すでに「完璧なカーテ…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    金価格、今年2倍超に高騰か──スイスの著名ストラテジ…

  • 8

    イスラエル国民、初のイラン直接攻撃に動揺 戦火拡…

  • 9

    甲羅を背負ってるみたい...ロシア軍「カメ型」戦車が…

  • 10

    中国の「過剰生産」よりも「貯蓄志向」のほうが問題.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入、強烈な爆発で「木端微塵」に...ウクライナが映像公開

  • 4

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 5

    ドイツ空軍ユーロファイター、緊迫のバルト海でロシ…

  • 6

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 7

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 8

    金価格、今年2倍超に高騰か──スイスの著名ストラテジ…

  • 9

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 10

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中