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広東烏坎(ウカン)村村長逮捕の問題点――勘違いしている日本メディア

2016年7月26日(火)16時05分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

村長逮捕に抗議する村民(6月20日、広東省・烏坎村) James Pomfret- REUTERS

 2012年に村民委員会の選挙やり直し要求を実現させた広東省の烏坎村で村長に選ばれた林祖恋氏が21日、収賄容疑で逮捕された。日本のメディアでは村の直接選挙を初めて実現したのが異例としているが、大きな間違いだ。

90年代から村長(村民委員会主任)選挙は直接選挙

 農村における村長の直接選挙は、改革開放によって無くなった人民公社制度以来、少しずつ進み始め、1991年に吉林省の平安村を皮切りに広がり、1998年に制定された「中華人民共和国村民委員会組織法」により法制化された。

 毛沢東時代は土地の集団所有制(集団農場)を中心として、人民公社により医療、教育から始まり政治に至るまで、すべてを人民公社が管理運営していたが、改革開放により生産請負制が導入され、人民公社制度が消滅したので、村の行政機能が危なくなった。

 そこで、1982年に発布された中華人民共和国憲法では全人代の末端における郷鎮政府制度が復活して、各地域各階層の人民代表(人代)を選ぶようになったが、それとは別に、農村には都市と異なるさまざまな制度や制約がある。土地所有や戸籍あるいは福利厚生などに関する都市と農村の違いだ。

 そのため中国の選挙制度では、全国的に行なわれている人代議員の選挙(最終的には全人代議員の選挙)とは別に、農村特有の問題解決のための「村民委員会選挙制度」を特設したわけだ。

 その試みは改革開放が始まった80年代から着手されており、特にアメリカのカーター元大統領と改革開放の総指揮者であった鄧小平との間での会談は有名だ。

 カーター氏は中国の農村における選挙のあり方に強い関心を持ち、カーター基金(カーター・センター)を中心に、民主的な村長選挙が重要だとして多額の投資も行い、中国の選挙制度の革新に貢献してきた。

 それも多少は手伝ったとは思うが、結果として1998年の「中華人民共和国村民委員会組織法」に漕ぎ着けた。

 多少正確ではないが、日本のWikipedia「中華人民共和国の選挙制度」にも、人代(人民代表)の選挙とは別に「村民委員会主任選挙」が特別に大きく扱われている。その背景には以上述べたような理由があった。

 ところで「中華人民共和国村民委員会組織法」の第11条と第13条によれば、「村民委員会主任、副主任および委員は、(全ての選挙権を持つ)村民による直接選挙によって選ばれる」となっている。

 ただし、ひとたび選ばれれば、「いかなる組織も人も、村民委員会のメンバーを取り換えてはならない」という、厳しい但し書きが付いている。任期は3年だ。

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