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歩行者とドライバー、自動運転車はどちらを守る?

2016年7月22日(金)16時30分
エリック・スミリー


 自動運転の推進派は、この技術が広く普及すれば、多くの人命が救われると主張する。13年の自動車事故による死者は、世界全体で125万人。原因はほぼ例外なく人間の過失だ。

 一方、自動運転車はほかの自動運転車と直接コミュニケーションを取ることが可能で、居眠りや不注意、飲酒とは無縁だ。自動運転技術が宣伝どおり安全なら、車に乗っていて事故死するリスクは確実に低下する。より多くの人命を救うために、搭乗者を犠牲にする車に乗っていたとしてもだ。

【参考記事】ハンズフリー通話も危険運転になる

 それでも衝突事故は起こり、命を落とす人は出る。問題は搭乗者と歩行者のどちらの命を優先すべきか、社会が事前に決めなければならないことだ。

 そうなると、誰も「歩行者を守るために木に激突して死ぬ側」にはなりたくない。この道徳的ジレンマが政府の政策を停滞させ、ひいては自動運転車の実用化を遅らせる可能性がある。

「自動車メーカーも規制当局も同様に考えるべき課題だ」と、論文は指摘する。規制当局の決定が遅れれば、「安全な技術の導入が先送りされ、交通事故の犠牲者を増やしかねない」のだから。

[2016年7月26日号掲載]

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