最新記事

テロ

連日の大規模テロ、ISISの戦略に変化

2016年7月5日(火)16時57分
デービッド・フランシス

死者は200人以上(7月3日、バグダッド) Khalid al Mousily- REUTERS

<トルコ、バングラデシュ、イラク、サウジアラビアと、この一週間悲惨なテロが相次いだ。米政府はシリアやイラクでの戦闘でISISの支配地域は減っているというが、一方でがん細胞を世界中に広げただけではないのか>

 7月4日、サウジアラビアの3都市が自爆テロに襲われた。聖地メディナでは、イスラム教で最も神聖な場所のひとつである「預言者のモスク」の近くで自爆テロがあり、少なくとも4人が死亡、1人が負傷した。前後して、西部のジッダと東部のカティフも襲われた。

 サウジアラビアだけではない。この1週間は世界各地でテロが相次いだ。ISIS(自称「イスラム国」、別名ISIL)とそれに感化された者たちの脅威はイラクやシリアに留まらないことを、世界は改めて思い知らされた。

 トルコとバングラデシュ、イラクで、3つの大きなテロ事件がわずか一週間の間に起きた。6月28日にはイスタンブールで、自爆テロ犯がアタチュルク国際空港を襲い、少なくとも44人を殺害。7月1日にはバングラデシュのダッカで、武装集団が各国の大使館が集まる地区のレストランを急襲し、少なくとも20人を殺害した。犠牲者の大半はイタリア人、日本人、インド人、アメリカ人などの外国人で、ISISが犯行を認めている。

 7月3日早朝にバグダッド中心部で起きた連続爆破テロ事件にもISISが犯行声明を出している。この事件では、爆弾を積んだミニバンが爆発して、少なくとも165人が死亡したとBBCが報道。7月4日にはCNNが、死者数は200人に達したと伝えた。

【参考記事】英国で260万語のイラク戦争検証報告書、発表へ ──チルコット委員会はどこまで政治責任を追及するか
【参考記事】イラク政府のファルージャ奪還「成功」で新たな火種

テロ攻撃のパターンに変化

 親米のサウジアラビアはISISにすれば裏切り者で、首都リヤドはたびたびテロ攻撃の対象になっている。だがリスク管理会社IHSカントリーリスクの主席アナリスト、フィラス・アビ・アリは7月4日に発表したコメントで、ISISの行動パターンの変化を指摘した。

「ここ数カ月のISISの攻撃目標は多岐にわたっている。シーア派モスクだけでなく、警察や治安部隊を標的にしたり、ローンウルフ(一匹狼)型のテロリストを使って外国人を狙うこともした。今回は、警備が厳重な外交資産(預言者のモスク)が標的になった。これは、ISISがさまざまな手段を試しながらサウジアラビアの弱点を学び、それを利用しようとしていることを示唆している」

 米政府はしばしば、イラクとシリアでのISISの支配地域は縮小していると強調する。だがその代わりにISISは世界の他地域へ拡大している。これまでのところ、ISISとのつながりを主張する戦闘員たちによる攻撃は、アメリカやヨーロッパ、クウェート、リビア、アフガニスタン、ナイジェリア、チュニジアでも起きている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トルコ裁判所、最大野党党首巡る判断見送り 10月に

ワールド

中国は戦時文書を「歪曲」、台湾に圧力と米国在台湾協

ビジネス

エヌビディアが独禁法違反、中国当局が指摘 調査継続

ビジネス

無秩序な価格競争抑制し旧式設備の秩序ある撤廃を、習
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中