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総額262億ドルのリンクトインはお買い得?

2016年6月23日(木)17時00分
ウィル・オリマス

Dado Ruvic-REUTERS

<SNSのリンクトインを総額260億ドル超で買収したマイクロソフトの「賭け」は、本当に利益を生み出せるのか>

 マイクロソフトが、ビジネス向けソーシャルメディアを運営するリンクトインの買収を発表した。総額約262億ドル。マイクロソフトにとって過去最大の買い物だ。

 リンクトインのジェフ・ワイナーCEOは社内に向けたメッセージで、「マイクロソフトの傘下で完全に独立した組織」になると説明し、グーグルによるYouTubeの買収や、フェイスブック傘下のインスタグラム、ワッツアップを引き合いに出した。さらに、自分はCEO職にとどまり、社員の仕事もほぼ「これまでどおり」だと主張している。

 ただし、額面どおりに受け取るわけにはいかない。今回の買収を成功させるためには、企業や求人の情報、ユーザーのビジネス上のつながりを可視化したリンクトインの「エコノミックグラフ」を、マイクロソフトのさまざまなソフトウエアやサービスと統合することが不可欠だ。リンクトインの独立を尊重し過ぎれば、完全な統合は実現できない。

【参考記事】リンクトインがスパム訴訟で和解金支払いへ

 そもそもリンクトインは、単体のサービスとしてはあまり魅力的ではない。業界によっては採用の有効なツールとなり、ビジネス情報の強力な検索ツールにもなり得る。しかし、一般的なユーザーにとっては公開されている履歴書にすぎず、「仕事用フェイスブック」であり、延々とスパムを送り付けてくる迷惑者だ。

独立性とシナジーの狭間で

 一方で、企業としてのリンクトインには強大な潜在能力がある。大きな武器は、ビジネスに特化したソーシャルメディアの先駆者としての圧倒的な優位性と、その結果として蓄積された世界中の企業と従業員に関する充実したデータセットだ。

 現時点では、その膨大なデータを主に企業の採用部門に有料で提供している。また、企業側がユーザーのニュースフィードに有料でコンテンツを投稿することもできる。

 中規模のスタートアップ企業なら、このようなビジネスモデルで十分だろう。しかし、マイクロソフトのようなITの巨人がリンクトインのデータを手に入れれば、比べものにならない可能性が広がる。

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