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ウクライナ

帰ってきた「闘うプリンセス」は次期大統領としてロシアに挑む?

2016年5月31日(火)16時33分
イレーナ・チャルーパ(米大西洋協議会ノンレジデント・フェロー)

Valentyn Ogirenko-REUTERS

<ウクライナ東部の分離独立派と交戦中に捕らわれ、ロシアで禁固22年を言い渡されたサフチェンコ中尉(35)が、ウクライナ抵抗のヒロインとして帰国した。次期大統領の声もあるが、腐敗したウクライナ政界には潔癖過ぎるとの声も> 写真は帰国したサフチェンコ

「わたしは2年間、独房に入れられていました。人に慣れていないので、言葉遣いが乱暴だったら許してください」。ナディア・サフチェンコは、ウクライナ・キエフのボリスポリ空港で、自分を取り囲む多数のジャーナリストや支持者に対してそう語った。

 ウクライナ軍人のサフチェンコは、2014年、ウクライナ東部で分離独立派と交戦中に捕らえられ、ロシアに移送されて裁判にかけられた。無実を訴えハンストを行ったが、2人のジャーナリストを殺した罪で禁固22年を言い渡された。その毅然とした態度と不屈の精神から東部におけるロシアとの戦争の象徴となり、「ウクライナの闘うプリンセス」と呼ばれるようになった。

【参考記事】プーチン、ウクライナに「戦争はない」と強弁

 今回のウクライナ帰国は、ウクライナで逮捕され裁判にかけられていた2人のロシア軍人、エフゲニー・エロフェイエフとアレクサンドル・アレクサンドロフとの捕虜交換の形で実現した。

 サフチェンコは、釈放に尽力した人々に感謝し、自分はいまも兵士だ念を押した。戦争に行ったまま帰らぬ息子を持つ母たちに同情し、ロシアの刑務所で今も拘束されているウクライナ兵士を解放する力になると約束した。

ティモシェンコも出迎え

 空港でサフチェンコを出迎えた人々のなかには、ウクライナの民主化運動オレンジ革命を率いた元首相でペトロ・ポロシェンコ大統領の政敵であるユリア・ティモシェンコの姿もあった。サフチェンコは、ティモシェンコが所属する全ウクライナ連合「祖国」に所属する国会議員でもある。この2人の初顔合わせには大きな象徴的な意味をもつ。

【参考記事】ドレスコードでティモシェンコ封じ?

 一方ポロシェンコ大統領は、サフチェンコの帰還が自分の手柄であるかのように長々と演説し、「ナディア」はウクライナ語で「希望」を意味することなどに触れた。サフチェンコはポロシェンコと握手を交わし、賞を授与されても礼を言うこともなく、直立不動の姿勢でマイクに向かうと、「わたしはウクライナの人々のために力を尽します」と誓った。

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