最新記事

インタビュー

オフィスのウェルビーイングはすぐ始められる!

2016年5月27日(金)16時27分
WORKSIGHT

 会社の人間というより、エンジニアというコミュニティの人間であるという具合に、組織より特定のテーマやコミュニティへの帰属意識が高まっている。企業の合併・倒産が相次いで、企業に依存することのリスクが高まっていることも背景にはあるかもしれません。ともあれ、そこに「会社はひとつの家族だ」という価値観を押し付けても敬遠されるだけです。

 このような時代に会社としてできることは2つあると思います。1つは社員をどれだけ成長させてあげられるか。もう1つは業界の内外でどれだけ有名にしてあげられるか。要は、簡単にスターにしてあげるということです。そういうマネジャーには今の若い人は間違いなくついてくる。それがマネジメント陣の責任であり、会社としてもそういう機会を与えてあげることが求められていると思います。*

社会的にウェルビーイングはいっそう重視されていく

 高度経済成長を経て、モノを売って利益を伸ばすというビジネスはもはや通用しません。仕事や人生に意味を見出しにくい時代ですから、特に経験が浅くて人脈もない若い人ほど途方に暮れてしまいます。そのときに、成長しながら業界内外の人たちとつながって存在感を示すことができれば、仕事にも人生にも手ごたえを感じて、結果としてウェルビーイングにもつながっていくはずです。

 社会的にウェルビーイングの考え方はいっそう重視されていくと思われます。アベノミクスの成長戦略でも健康長寿社会の実現に向けた市場創出がうたわれていますし、将来的には都市の環境作りにもウェルビーイングの考え方が反映されていくでしょう。

 そのときに企業としてどうウェルビーイングを実践していくか。オフィスのウェルビーイングは組織体として決定・実践されるものではありますが、あくまで主体は個人であることを念頭に置いておかなければなりません。ワーカー1人ひとりが寝る前に、ああ今日も充実した1日を送ることができたと満足できるかどうか。社員の健康をどこまで親身に考えられるかという企業の誠意が問われると思います。

WEB限定コンテンツ
(2015.9.9 渋谷区の石川氏オフィスにて取材)

wsIshikawa_site1.jpg石川氏が共同創業者の株式会社キャンサースキャンは、ソーシャルマーケティング、調査・研究、データ解析などを通じた行動科学に基づく手法で社会や医療の問題の解決を図る。
https://cancerscan.jp/

wsIshikawa_site2.jpg石川氏が共同創業者/副社長を務める株式会社 Campus for H は、企業、組織の健康づくり・生産性向上に関する調査・研究や、関連するサービスの開発・販売とコンサルテーションを行っている。
http://campus-h.com/

* ウェルビーイング
もともとは国際保健会議で採択されたWHO憲章の言葉で、「身体的・精神的・社会的に良好な状態」を指す。現在では「ワーカーにとって心身ともに負担の少ない環境を提供することで企業価値を高める手段」としても注目されている。

** オフィスに観葉植物を置くこともウェルビーイングに効果的と石川氏はいう。「目に優しいし、空気もきれいになるし、みんなで育てればポジティブな人間関係の形成にもつながります」

*** 社員の成長を促す企業の一例として、石川氏はGoogle社を挙げる。世界中から専門家を招いて社内で講演会を開き、開発陣の成長の機会を作っているほか、途上国で働く社員が現地で病院を造るプロジェクトを立ち上げても容認する。そうした活動をする人が社内にいい刺激を与えると考えているからだ。

wsIshikawa_portrait.jpg石川善樹(いしかわ・よしき)
予防医学研究者・医学博士。1981年、広島県生まれ。東京大学医学部を経て、米国ハーバード大学公衆衛生大学院修了。現在は株式会社キャンサースキャンおよび株式会社Campus for Hの共同創業者。ビジネスパーソン対象の講演や、雑誌、テレビへの出演も多数。NHK「NEWS WEB」第3期ネットナビゲーター‎。

※当記事はWORKSIGHTの提供記事です
wslogo200.jpg


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドネシア、340億ドルの対米投資・輸入合意へ 

ワールド

ベトナム、対米貿易協定「企業に希望と期待」 正式条

ビジネス

アングル:国内製造に挑む米企業、価格の壁で早くも挫

ワールド

英サービスPMI、6月改定は52.8 昨年8月以来
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索隊が発見した「衝撃の痕跡」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    米軍が「米本土への前例なき脅威」と呼ぶ中国「ロケ…
  • 6
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「22歳のド素人」がテロ対策トップに...アメリカが「…
  • 10
    熱中症対策の決定打が、どうして日本では普及しない…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中