最新記事

中東

イスラエルに史上最も右寄りの政権誕生

2016年5月26日(木)20時53分
ジャック・ムーア

Nir Elias- REUTERS

<逆らうアラブ人は斬首刑、という発言で悪名高いリーベルマン前外相がネタニヤフの連立内閣入りに合意。パレスチナ人の抵抗はますます困難になる?> 写真はリーベルマン

 イスラエル政府は昨日、ベンヤミン・ネタニヤフ首相がアビグドル・リーベルマン前外相を新政権に迎え入れることで合意したと発表した。リーベルマン率いる極右政党「わが家イスラエル」が、ネタニヤフが率いる右派政党リクードの連立政権に参加する。リーベルマンは国防相に就任する模様。

 もともと連立に参加している極右政党「ユダヤの家」に「わが家イスラエル」が加わることで、イスラエル史上でも最も右派寄りの内閣が誕生した。

 モルドバ出身のリーベルマンは、イスラエルで最も問題発言の多い政治家として知られる。アラブ系住民がイスラエル人を襲撃したのを受けて昨年3月、イスラエル国家に忠誠を誓わないアラブ系イスラエル人は斬首刑にすべきだと発言し波紋を呼んだ。イスラエル人を攻撃するパレスチナ人に対する死刑の適用を可能とする法案の実現も目指している。

【参考記事】「アラブ系住民を斬首刑に」イスラエル外相の暴言

 おかげでネタニヤフ政権は、国会定数120議席のうち61議席とぎりぎりの過半数から5議席増やし、66議席を確保した。

穏健派が犠牲に

 連立に加わる条件として、ネタニヤフは国の年金基金に3億6300万ドルを追加することでリーベルマンと合意した。年金受給者の多くは旧ソ連出身で、リーベルマンの最も強力な支持基盤だ。

 リーベルマンを迎え入れる代わりに辞任に追い込まれた形になったのが、穏健派のモシェ・ヤアロン国防相。先週、ネタニヤフへの信頼を失くしたとして、突然辞任した。

 3月にパレスチナ人の男性がナイフでイスラエル兵を襲い怪我をさせた事件で、怪我をして横たわる犯人の頭を別の兵士が近距離から撃ち抜いて殺したことについても、ヤアロンは「イスラエル国防軍の名折れだ」と兵士を批判したが、リーベルマンは称賛した。

【参考記事】オバマはアラブ世界に謝罪するのか

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀の12月利下げを予想、主要金融機関 利下げな

ビジネス

FRB、利下げは慎重に進める必要 中立金利に接近=

ワールド

フィリピン成長率、第3四半期+4.0%で4年半ぶり

ビジネス

ECB担保評価、気候リスクでの格下げはまれ=ブログ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 10
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 5
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 8
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中