最新記事

イスラエル

「アラブ系住民を斬首刑に」イスラエル外相の暴言

総選挙を目前に憎悪を煽るリーベルマンにアラブ系イスラエル人が猛反発

2015年3月12日(木)17時41分
ジャック・ムーア

極右 アラブ系政党から「ユダヤ版イスラム国」と呼ばれるリーベルマン Ronen Zvulun-Reuters

 イスラエル国家に忠誠を誓わないアラブ系イスラエル人は「斬首の刑」に処すべきだ――イスラエルのアビグドル・リーベルマン外相が3月17日の総選挙に向けた演説でそう発言し、波紋を呼んでいる。

 アラブ系イスラエル人政党タール党のアフメド・ティビ党首はヨルダン川西岸のジェニン大学で行った講演で、リーベルマンを「ユダヤ版イスラム国」と呼び、問題の発言に関し刑事責任を追及すべきだと語った。

 今回の選挙で、タール党をはじめとするアラブ系政党の連合体は「民主的な手段で人種差別主義者とファシストの首を切る」と、ティビは宣言した。「つまり、できるかぎり多くの議席を獲得するということだ。われわれが力を増せば増すほど、ユダヤ人の力は弱まる」

 リーベルマン外相は極右政党「わが家イスラエル」の党首で、ウルトラナショナリストとして知られる。問題の発言は、9日にイスラエル西部の都市ヘルツェリヤで選挙演説を行った際に飛び出した。「われわれの側につく者たちにはすべてを与えよう。だが、われわれに逆らう者たちに相応しいのは斧で首を斬る刑だ」極右の聴衆はこれを聞いて熱狂した。

 この発言はイスラエルのソーシャルメディアで轟々の非難を浴びている。ヘブライ大学のアブラハム・ディスキン教授(政治学)も、外相の発言はイスラエルの刑法で禁じられた扇動に当たるとして、刑事責任を問うべきだと語っている。「暴力、特に残虐な処刑を呼び掛けることは法に反する。言論の自由があるといっても、これは明らかに扇動であり、刑法と(事実上の憲法である)基本法に明記された犯罪行為だ」

 リーベルマンはヘルツェリヤでの選挙演説で、「(アラブ系住民が多数を占める都市)ウムエルファーンがイスラエル領内に留まる理由はない」とも述べた。さらに、「ナクバの日」に黒い旗を掲げるアラブ系住民をパレスチナ自治区に追いやるべきだとも発言した。「ナクバの日」とは、1948年にイスラエルが独立宣言を行い、大量のパレスチナ難民が発生した日で、ユダヤ系イスラエル人にとっては建国記念日だが、アラブ系住民(パレスチナ人)は「大災厄」を意味する「ナクバ」の日と呼んでいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国大統領、1月4ー7日に訪中 習主席とサプライチ

ビジネス

米シティ、ロシア部門売却を取締役会が承認 損失12

ワールド

マレーシア野党連合、ヤシン元首相がトップ辞任へ

ビジネス

東京株式市場・大引け=続落、5万円台維持 年末株価
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中