最新記事

テロ

ISISが3500人のNY「市民殺害リスト」をアプリで公開

2016年5月11日(水)19時30分
ジャック・ムーア

「死のリスト」に名前が載った人たちは今、どんな気分でいるのだろうか。

 匿名を希望したある女性は、ニューヨーク市警の訪問を受けた。警察官は何かあったら電話するようにとFBIの電話番号を彼女に伝え、その後、メールでも連絡をくれたという。しかし、不安は一向に和らいでいない。

「私、交通違反すらしたことないぐらいに恐がりなんです。(脅迫の話を聞いて)私があまりに震え上がっていたので、自分たちも信じていないから、と警察官は言ってくれました」と彼女は言う。「でも、とても不安です」。

 一方、リストに名前が載っても気にしないという人もいる。ブルックリン在住の50代のアーティスト、ケイティ・マーズは、個人情報を流すという戦略を「ダサい」と一蹴。「すっかり忘れていました。こんな情報を集めるのは簡単で、誰でもできますよ。私は全然怖いと思っていません」

脅迫リストを元にテロが行われれば恐怖が拡散する

 殺害リストを回覧するという戦略を始めたのは、名の知れたISISのイギリス人ハッカー、ジュナイド・フセインだとされている。フセインは2015年8月に、米軍主導の多国籍軍による空爆で死亡した。

 また、外国にいる支持者に呼び掛けて、それぞれの国で個別にテロを行えと仕向ける戦略を始めたのは、ISISで対外戦略を担う要職にあり、報道官でもあるアブ・ムハンマド・アルアドナニだ。アルアドナニは2014年9月、肉声による声明を出し、こう呼び掛けている。「不信心者のアメリカ人とヨーロッパ人を殺せ。ヨーロッパ人では、特にフランス人、オーストラリア人、カナダ人......方法は何でも構わない」

【参考記事】ISISがフェイスブックのザッカーバーグに報復宣言

 安全保障の専門家で、クロノス・アドバイザリーの共同創設者であるマイケル・スミスによれば、ツイッターやウェブサイトのハッキングといった低レベルのサイバー攻撃よりも、オンラインで支持者に働き掛ける行為のほうがよほど危険だ。ISISはこうした殺害リストを、ツイッターやテレグラムを使ってどんどん拡散・宣伝している。

「これにより世界の潜在的な支持者に向けて重要な合図を送っている。自分の知識や能力を使ってテロを行うことが、支持表明をすることにつながる、というメッセージだ」と、スミスは言う。「(ISIS支持者が)脅迫リストを入手し、その情報を元に標的を決めるようになれば恐怖は一気に広まるだろう」

 FBIは本誌の取材に対し、特定の脅迫に関してコメントはしないと書面で回答した。だが今回のリストに載った人たちを訪れて脅迫について知らせたことは認め、一般的な対応だと述べている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル外相「終わりなき戦争望まず」、終結時期は

ワールド

米国防長官、イラン攻撃「最も激しい日に」 最多の戦

ワールド

イランの「黒い雨」、WHOが健康被害を警告 

ワールド

欧州委員長、原発縮小は「戦略ミス」 化石燃料依存に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開された皇太子夫妻の写真が話題に
  • 4
    「一日中見てられる...」元プロゴルファー女性の「目…
  • 5
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 6
    人間ダンサーを連れて「圧巻のパフォーマンス」...こ…
  • 7
    身長や外見も審査され、軍隊並みの訓練を受ける...中…
  • 8
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 9
    トランプも無視できない? イランで浮上した「危機管…
  • 10
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 5
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中