最新記事

貿易

オーストラリア新造潜水艦の共同開発相手は仏に、日本敗れる

日本はインドネシアの高速鉄道に続き大型受注を逃す

2016年4月26日(火)12時20分

4月26日、オーストラリアのターンブル首相は、次期潜水艦の共同開発相手に、フランスの政府系造船企業DCNS社を選定したと発表した。契約規模は500億豪ドル(400億米ドル)となる。写真は海上自衛隊の潜水艦。提供写真(2016年 ロイター)

 400億ドルに上るオーストラリアの次期潜水艦をめぐる受注競争は26日、フランスに軍配が上がった。軍事力強化を進める安倍晋三首相のもと、対豪関係の強化と初の大型武器輸出を目指した日本は敗れた。

 豪ターンブル首相は26日、造船産業が集積する南オーストラリア州アデレードで会見し、「フランスの提案が、豪州が求める要件を最も満たしていた」と発表し。「次期潜水艦の選定委員会、国防省、専門家による検討結果は明確だった」と述べた。

 アジア大平洋地域で中国が台頭する中、豪州は自国の戦略的、経済的利益を保護するため国防費を増やしている。6隻を保有する潜水艦も2030年ごろに世代交代し、最大12隻まで増強する予定で、豪政府は共同開発相手を求めていた。

 豪政府は当初、要求性能に近い潜水艦を保有している日本とのみ協議し、日本国内で建造することを検討してきた。日本側も、中国の影響力が増す中、潜水艦の共同開発を通して豪州との防衛協力を強める観点から交渉を進めた。

 しかし景気が減速し豪州では当時のアボット首相の支持率が低下。日本と組むと国内経済と雇用にメリットがないとの反発が強まり、昨年2月にドイツとフランスを含めた入札に切り替えた。

 入札には日本の防衛省・三菱重工業<7011.T>・川崎重工業<7012.T>で作る官民連合と、仏政府系造船企業のDCNS、ドイツのティッセンクルップ・マリン・システムズ(TKMS)が参加した。日本が最有力とみられていたが、武器の国際共同開発の経験が乏しいこと、豪国内で建造することに途中まで消極的だったことで、競合にリードを許した。

 今回の選定結果を受け、中谷元防衛相は記者団に「たいへん残念に思う。豪側に説明を求め、その結果をしっかり今後の業務に反映したい」と語った。TKMSのアツポディエン会長は「豪海軍の能力向上にいつでも手を貸す用意がある」とのコメントを発表した。

 DCNSは5000トンの原子力潜水艦「バラクーダ級」の動力をディーゼルに変更した艦を、日本は海上自衛隊が運用する4000トンの「そうりゅう型」をベースにした艦を、ティッセンクルップは2000トン級の「214型」を大型化することを提案していた。

(コリン・パッカム、久保信博、ティム・ケリー)

[シドニー/東京 26日 ロイター]

120x28 Reuters.gif
Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ウクライナ軍撤退なければ、ドンバス地方を武力で完全

ビジネス

アングル:長期金利2.0%が視野、ターミナルレート

ワールド

中国、レアアース輸出ライセンス合理化に取り組んでい

ワールド

ADBと世銀、新協調融資モデルで太平洋諸島プロジェ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 4
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中