最新記事

自動車

熊本地震のショック全国に響くトヨタ、生産への影響は9万台にも

2016年4月20日(水)19時22分

 トヨタはグループ会社の愛知製鋼の事故で生産が遅れたため、4月から休日出勤や残業による生産の挽回に入り、8―9月をめどに取り戻す予定だった。両氏とも2017年3月期末までにトヨタが生産を挽回するとみて通期での影響は軽微とみるが、愛知製鋼の事故対応による増産も重なり、杉本氏は「10―12月期も頑張って生産しないと取り戻せないのでは」との見方を示している。

日産は九州工場の操業継続

 同じくアイシンや熊本県内の取引先から部品を調達していた日産自動車<7201.T>。16日は設備の安全や部品供給体制を確認するため九州工場(福岡県苅田町)の稼働を見合わせたが、18日からは稼働率を落としながらも操業を続けている。なぜ日産は工場を止めずに済むのか。

 日産も九州での生産では九州産部品を多く使っているが、加えて、本州より距離が近い韓国や中国から調達した部品も積極的に使用している。海外調達では飛行機や船での輸送リスクなどを考慮し、在庫を多めに持つ。杉本氏は、トヨタのほうが日産より九州からの部品調達が多く、かつ在庫も少ないため、生産休止が広がったとみている。

 在庫は最小限にして生産効率を追求するトヨタのいわゆる『ジャスト・イン・タイム』。この思想は平常時にはうまく機能するが、11年の東日本大震災のような災害時には「アキレス腱」にもなると指摘するアナリストもいる。だが、ダイハツ幹部は「今後も『ジャスト・イン・タイム』の哲学は維持し続ける」と強調する。

影響長引く恐れも

 アイシンの影響は広がる恐れもある。同社からエンジン部品を調達していた三菱自動車<7211.T>は水島製作所(岡山県倉敷市)での軽自動車生産を18日から20日まで休止。その先はつど検討するといい、綱渡り状態だ。同じくアイシン部品を採用するマツダ<7261.T>の国内工場は今のところ22日まで稼働する見込みだが、来週以降は部品供給に支障が生じないか確認中という。

 熊本県内の車載用半導体工場の状況も不透明なため、不安の声が上がる。三菱電機<6503.T>の工場(合志市)では家電やハイブリッド車のモーター駆動に用いるパワー半導体モジュール製品を生産するが、設備被害の確認作業が続いている。同社はこの製品で世界首位クラスのシェアを誇る。ルネサスエレクトロニクス<6723.T>の川尻工場(熊本市)は東日本大震災で被災した那珂工場(茨城県ひたちなか市)に比べて「被害は限定的」(広報)のようだが、詳細はまだ不明。21日をめどに生産再開日を公表する。  

(白木真紀、田実直美、山崎牧子 編集:北松克朗)

[東京 20日 ロイター]

120x28 Reuters.gif
Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

成長型経済へ、26年度は物価上昇を適切に反映した予

ビジネス

次年度国債発行、30年債の優先減額求める声=財務省

ビジネス

韓国ネイバー傘下企業、国内最大の仮想通貨取引所を買

ワールド

中国、与那国島ミサイル計画に警告 「台湾で一線越え
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 10
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中