最新記事

タックスヘイブン

米政府の新たな税逃れ抑制策、外国企業も直撃か

2016年4月13日(水)11時08分

 その上でマクラーノン氏は、問題の複雑さや内国歳入庁(IRS)が具体的に新たな権限をどう行使するかが不透明なことで、米国のプロジェクト案件に投資する魅力が薄れると指摘し、「米国への外国直接投資を冷え込ませる」と警告した。

多額の逸失税収

 米財務省は、新規則が念頭に置いているのはインバージョンや外国企業の買収直後に配当を支払うための資金調達を目的として実施された大規模な借り入れであり、米国子会社でより幅広く行われているような借り入れではないと説明している。

 財務省が先週示したファクトシートには「提案した規制は、工場建設や設備導入といった実際の事業投資のためのグループ内借り入れには一般的には適用されない」と記された。

 各企業は通常、グループ内の資金の貸し借りについて詳細は公表しないため、こうした取引を通じて外国企業が米国で稼いだ利益に対する課税をどの程度逃れたか具体的な数字で把握することはできない。

 それでもシティ大学ロンドンのリチャード・マーフィー教授(国際政治経済問題)は、IRSの毎年の逸失している税収額が数百億ドルに上ると推定している。

 グループ内借り入れで米国における課税負担を減らした企業としては、製薬のグラクソ・スミスクラインや教育事業のピアソン、電力・ガスのスコティッシュ・パワー、通信のボーダフォンなどが挙げられる。

 ただこうした企業はいずれも既に子会社の借り入れを解消し、米国のあらゆる税法を守っているとしている。借り入れの実態については、データ流出や税務当局による法的措置によって明るみになっていた。

 2013年のロイターの調査では、欧州最大手ソフトウエアのSAPが、法人税率が最低35%の米国で稼いだ利益を税率12.5%のアイルランドに移転させた具体的な手法が判明している。

 (Tom Bergin記者)

 

[アテネ 12日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾でリコール投票始まる、野党議員24人の解職に是

ワールド

OPECプラス、有志8カ国の増産方針維持 28日の

ワールド

トランプ大統領、ロシアとの核軍縮合意「失効望ましく

ビジネス

アングル:低迷ヘルスケア株、浮上の鍵は米薬価政策巡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:山に挑む
特集:山に挑む
2025年7月29日号(7/23発売)

野外のロッククライミングから屋内のボルダリングまで、心と身体に健康をもたらすクライミングが世界的に大ブーム

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 2
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心中」してしまうのか
  • 3
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や流域住民への影響は?下流国との外交問題必至
  • 4
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 5
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 8
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 9
    機密だらけ...イラン攻撃で注目、米軍「B-2ステルス…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「電力消費量」が多い国はどこ?
  • 1
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 2
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人口学者...経済への影響は「制裁よりも深刻」
  • 3
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心中」してしまうのか
  • 4
    「マシンに甘えた筋肉は使えない」...背中の筋肉細胞…
  • 5
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 8
    「カロリーを減らせば痩せる」は間違いだった...減量…
  • 9
    父の急死後、「日本最年少」の上場企業社長に...サン…
  • 10
    約558億円で「過去の自分」を取り戻す...テイラー・…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 6
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 7
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中